大阪市立大学の研究グループは,ギ酸脱水素酵素が二酸化炭素(CO2)を直接ギ酸に還元する反応を触媒していることを明らかにした(ニュースリリース)。
科学技術の発展と共に温室ガスなどによる地球環境汚染,大量の産業廃棄物処理および石油・石炭などの化石エネルギーの枯渇という重大な問題を次の世代のために早急に解決する必要がある。
特に今世紀は,環境低負荷型エネルギー循環システムの構築や二酸化炭素を代表とする温室効果ガスを有効利用するエネルギー変換システムの開発が必須となる。
地球規模で削減目標を定められている二酸化炭素に関して,排出を規制して削減することも考えられるが,これを積極的に原料として利用し,有用物質に変換する方法も重要な課題となる。このような状況下で太陽エネルギーを利用し二酸化炭素を新たな燃料に変換する人工光合成技術が注目を浴びている。
これまで研究グループでは,二酸化炭素をギ酸(燃料,化成品,エネルギー貯蔵媒体)に変換する反応を促進させる触媒=“ギ酸脱水酵素”の活性を飛躍的に向上させることを目的とした研究を進めてきた。
一方で,ギ酸脱水酵素は水溶液中で使われ,水溶液中では二酸化炭素が,それ以外に炭酸水素イオン(HCO3–),炭酸イオン(CO3–)として存在するため,酵素が3種類のどれをギ酸に還元しているかは明らかにされていなかった。
今回研究グループは,水溶液中でのこれら3種類の存在比率を変化させ,精密に制御してギ酸脱水酵素を作用させると,二酸化炭素の比率が大きいときにのみギ酸へ還元され,水溶液中で二酸化炭素が炭酸水素イオン,炭酸イオンに変化してしまうと,ギ酸には還元されないことを突き止めた。
今回の発見は,二酸化炭素を効率的に有機分子に変換する人工光合成系実現に向け,触媒の開発・設計における重要な指針になるものとしている。