宇宙航空研究開発機構(JAXA),情報通信研究機構(NICT),ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)は,国際宇宙ステーション(ISS)の「きぼう」日本実験棟に設置した小型光通信実験装置「SOLISS」とNICTの宇宙光通信地上局(光地上局)との間で双方向光通信リンクを確立し,Ethernet経由での高精細度(HD)画像データ伝送に成功した(ニュースリリース)。
「SOLISS」は2019年9月にISSの「きぼう」船外実験プラットフォームに設置され,その後,軌道上と光地上局との間で双方向光通信リンクを確立すべく,各種パラメータを調整しながら天候を踏まえつつ毎週一回程度の頻度で通信試験を行なってきた。
その結果,2019年10月25日に光地上局への光ダウンリンク(指向制御)を確立し,2020年3月5日には「SOLISS」と光地上局との間で波長1.5µmレーザー光による双方向光通信リンクの確立に成功した。さらに3月11日には「SOLISS」から 100Mb/sのEthernetによる通信を用いてHD画像を光地上局で受信することに成功した。
JAXAは,「きぼう」日本実験棟の有償利用制度を通じて,2019年9月に宇宙ステーション補給機「こうのとり」8号機にて「SOLISS」をISSへ送り届け,「きぼう」日本実験棟の船外実験プラットフォームにある中型曝露実験アダプター(i-SEEP)に設置した。
NICTとソニーCSLは「SOLISS」と光地上局との間の双方向通信実証に向けて2018年より共同で研究を実施してきた。NICTは「SOLISS」の開発にあたり,NICTが保有している衛星搭載用光通信ターミナルの開発技術を基にした知見を提供し,「SOLISS」軌道上実証試験に必要な計測や実験を共同で行なってきた。
今回の双方向光通信実験の成功は,NICTが実験運用に関連した技術支援を行ない,i-SEEP上における「SOLISS」の軌道上運用をJAXAが支援しながら,ソニーCSLが通信試験を実施した結果となる。
光には電波と比べて高速大容量の通信を可能とする特長がある。今回,既に確立された光ディスク技術と標準規格であるEthernetによる光双方向通信実験が成功したことによって,今後の宇宙空間における地球周回軌道を始めとした衛星間や地上との超高速(低遅延)データ通信や,大容量リアルタイムデータ通信の実現や汎用化などが期待されるという。
今後,研究グループは実験結果の詳細な解析及び評価を実施する予定とし,「SOLISS」による通信の安定性の向上などを目指した実験運用は2020年6月初旬頃まで継続する予定としている。