島津製作所は,国立がん研究センター(国がん)と新たに共同研究契約を締結した(ニュースリリース)。
2020年4月1日より同センター東病院(東病院)の次世代外科・内視鏡治療開発センター(NEXT)内視鏡機器開発室に開発拠点を設置し,新たながん治療法として注目されている「光免疫療法」に関する計測技術の臨床応用に向けた研究を共同で実施する。
「光免疫療法」は,米国国立衛生研究所の一部門である米国国立がん研究所が開発した,がん細胞を狙い撃ちし,短時間で破壊する手法。がん細胞に特異的に結合する抗体に光感受性物質を結合した複合体薬剤を使用,非熱性赤色光の照射により光化学反応を起こす。
島津製作所と米国国立がん研究所は,動物実験において赤色光照射後の複合薬剤の変形または凝集する様子の画像化に成功し,この治療法のメカニズムを明らかにした。
島津製作所と東病院および同センター先端医療開発センター(EPOC)は,2019年3月より近赤外光カメラシステムと質量分析装置を活用した光免疫療法の非臨床試験をEPOCで行なってきた。試験では治療部位の可視化や記録が出来る可能性について前向きな結果が得られている。
今後の研究では,EPOCで行なってきた非臨床試験で得られた知見と,東病院の光免疫療法における豊富な臨床経験および島津製作所の技術を活用することで「患部の状態の可視化や記録」の実現・治療評価技術の確立を目指す。
島津製作所は,医療現場に最も近い病院に共同研究開発拠点を置くことで,現場のニーズを満たした医療機器を開発し,その有用性を検証していくという。またこの共同研究により,光免疫療法の早期実現と普及に貢献していくとしている。