理研ら,中性子回折法で集合組織測定に成功

日本原子力研究開発機構(原子力機構),理化学研究所(理研)の研究グループは,中性子回折法による集合組織測定技術と,理研小型加速器中性子源システムRANS(ランズ)を組み合わせることで,中性子回折法による実験室レベルでの集合組織測定技術の開発に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

結晶の向きの偏りは集合組織と呼ばれ,その偏りの仕方によって材料の強度や延性などの材料特性が変化する。そのため,延性を持たせた高強度な鉄鋼材料の開発には,その集合組織の状態を正しく把握して制御することが重要になる。鉄鋼材料のバルクに対して集合組織を測定するには,鋼材に対して透過性の高い中性子を用いる中性子回折法が有効となる。

しかし,その中性子源は研究用原子炉などの大型実験施設に限られ,企業の実験室や工場などでの利用が期待される小型中性子源では,ビーム強度が低くこれまで測定されてこなかった。

RANSでは,飛行時間型中性子回折と呼ばれる回折手法を用いており,様々な波長をもった複数の中性子線が同時に発生して試料に向かう。波長の異なる中性子線はそれぞれ異なる速度を持つため,中性子が試料に当たり,検出器にたどり着くまでの時間を計測することで,異なる波長の中性子線を見分けることができる。

中性子線が試料に当たると,その物質の結晶粒の向きによって,異なる方向に異なる波長,異なる強度の中性子線が跳ね返ってくるため,それらを解析することで,試料の集合組織を知ることができる。

研究グループは,鉄鋼材料のIF鋼を使った一辺が15mmの立方体形状の試料を用意した。回折計の構築では,遮蔽を効率的に配置してバックグラウンドノイズを低減し,中性子ビームを有効利用することで,出力の小さい小型加速器中性子源でも複数の回折ピークを識別できるようにした。

また,試料に入射中性子線を当てる角度を変えて実験を繰り返すために,試料を2つの軸で回転させる方式を取り入れた。一方,RANSの検出器の検出面領域を16個に分割することで,16の異なる方向の回折線を同時に捉えることを可能にした。

これにより,試料を回転させる回数をできる限り少なくすることが可能となり,試料の全方位の回折パターンを5時間で測定することができた。そして解析条件の最適化を行なうことで,小型加速器中性子源により鉄鋼材料の集合組織を測定することに初めて成功した。

この研究成果により,今後,実験室や工場レベルでの集合組織の測定が実現し,材料の基礎研究,軽量かつ高強度を可能にする新材料開発および加工技術開発の加速につながるとしている。

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