凸版印刷は,微細印刷技術をもとに基材表裏(両面)に微細線を高精度な位置合わせ技術で印刷して,見る角度によって印刷物の色や絵柄が変化するチェンジング印刷技術を確立した(ニュースリリース)。
この技術によって印刷のみで極薄透明フィルム上に形成できるレンズ不要のチェンジング印刷が可能となる。
微細線印刷技術は導電性インキを用いて配線パターンを形成するなどプリンテッドエレクトロニクス分野で主に研究され,これまでのフォトリソグラフィ方式よりも簡便なプロセスでの生産が期待できることから,実用化に向けて開発が進められてきた。
今回の微細線によるチェンジング印刷技術は,シアン(C),マゼンタ(M),グリーン(G),ブラック(K)の4色のインキを基材の表裏に高精度な位置合わせで印刷し,直線・曲線・文字やマークなど様々なパターンを形成できる。
また,従来のチェンジング印刷では,印刷線幅に応じた基材の厚さが必要だった。例えばスクリーン印刷法などで印刷する場合,厚い基材が必要になる。また薄い基材を用いる場合は,レンチキュラーレンズ(カマボコ状の凸レンズ)との組合せを用いるなど光路の長さ(光が通過する距離)を変えることで対応していた。
今回開発した技術は,線幅と間隙を10μmで印刷することができる独自の微細線印刷法を使ったもので色の重なり方の違いによって視認の変化を作り出し,レンズを使わずに非常に薄い基材のみでチェンジング効果を得ることが可能になった。
例えば,厚さ50μmの透明フィルム基材の表側に線幅20μmで印刷したシアン,マゼンタ,グリーンを配置し,裏側には表側のシアンとマゼンタに重なる部分にのみブラックを位置合わせし印刷を行なう。これにより表側から見た場合,ブラックと重なり合った色は視認されず,グリーンのみを視認することができ,レンズがなくてもチェンジング効果を得ることができる。
同社は今後も,これまでプリンテッドエレクトロニクス分野で培ってきた導電性材料と融合することで,意匠性を持たせたエレクトロニクス商材などに展開できるとしている。