電中研ら,半導体ナノ結晶で光薄膜トランジスタ作製

電力中央研究所(電中研),早稲田大学,スイスのFluxim AGの研究グループは,二重構造を持つ半導体ナノ結晶を用いて作製した電界効果トランジスタが従来を上回る大きな光電流増幅効果があることを確認した(ニュースリリース)。

トランジスタに光が照射されると,構成する半導体材料の中で動き回ることができる電子の数が増え,未照射時に比べて流れる電流が大きくなる。この電流値の違いを観測することで,光を検出するセンサーとして用いることができる。

今回の研究対象であるナノ結晶は,直径が5~20nm程度の半導体ナノ粒子であり,物理,化学,生物の基礎研究から工学,医療分野での応用研究まで,多機能材料として多くの研究者によって精力的に研究されている。

この研究では,半導体ナノ結晶の一種,CdSe/CdSを対象とした。CdSe/CdS は,カドミウム(Cd) とセレン(Se)のコアとカドミウムと硫黄(S)のシェルの二重構造を有するナノ結晶で,それぞれのサイズ(コア部分の直径やシェルの厚み)を変えることで物理的・化学的な性質を変化させることができる。

シェルを含めた厚みが10nm程度の高純度なCdSe/CdSナノ結晶のコロイド溶液を用いた溶液プロセスにより,薄膜の厚さが20nm程度に均一のトランジスタを作製した。

次に,作製したトランジスタに紫外線を照射した場合と未照射の場合の電流値の違いを調べた。その結果,未照射の場合にはほとんど電流が流れずトランジスタとしての動作を示さないにも関わらず, 照射時にはゲート電圧の印加とともに電流が増大することを確認した。

さらに,光照射前後の電流比に対する膜厚依存性やゲート電圧依存性を調べた結果,膜厚が100nm程度を下回る時に最も増強され,最大で10万倍程度に達することがわかった。これは,これまでに電界効果トランジスタ構造で検討された光センサーの中では,最も高い感度となる可能性がある。

この研究により,ナノ材料をベースとした複合材料が,光センサーとしての高いポテンシャルを有することを示した。ナノ結晶は,サイズ,材料,そして化学的な修飾により,性質を自在にコントロールすることが可能となる。

また,この研究で用いた溶液プロセスによるデバイスの作製は,安価でフレキシブルな電子素子を作製する事が可能となる。現在,ナノ材料のもつ様々な機能性が世界中で注目され,研究が進められており,ナノ材料を活用した多機能な光センサーが生み出される可能性もあるとしている。

キーワード:

関連記事

  • OKI、ドイツの研究機関とフォトニクス技術を共同研究へ

    OKIは、独Fraunhofer Heinrich-Hertz-Institutとフォトニクス技術に関する5年間の包括的共同研究契約を2025年12月15日に締結した(ニュースリリース)。 同社は今後5年間、Fraunh…

    2026.02.03
  • 東北大など、量子ドット1個で室温単一電子トランジスタを実現

    2年前に半導体コロイド量子ドット1個を用いた単一電子トランジスタ(SET)を作製した東北大学と東北工業大学は、従来困難だった単一量子ドットの電気伝導の詳細な評価に成功するとともに、室温でのSET動作を初めて実現した(ニュ…

    2026.01.08
  • 2026年以降の半導体成長を支える技術基盤とは

    生成AIの急速な普及や、様々なモノの電動化の進展を背景に、半導体市場は2026年以降も中長期的な成長軌道を描くと見込まれている。先端ロジック半導体では、AI処理能力のさらなる高度化に向けて微細化競争が続く一方、電力インフ…

    2026.01.05
  • 埼玉大と東大、レーザー計測技術によりストリーマ放電の電子密度と電界を計測

    埼玉大学と東京大学は、高性能なレーザー計測技術により、放電発生初期の超高速現象(ストリーマ放電)を支配する主要パラメーター群をセットで直接計測することに成功した(ニュースリリース)。 放電は次世代半導体の製造プロセスや宇…

    2025.12.16
  • 北大ら,時分割X線回折像でナノ粒子の回転を解析

    北海道⼤学と東京大学は,時分割X線回折像から高分子複合材料におけるナノ粒子の回転ダイナミクスを測定する新たなX線活用手法の開発に成功した(ニュースリリース)。 プラスチックやゴムに代表される高分子材料は,日常生活から産業…

    2025.10.10

新着ニュース

人気記事

編集部おすすめ

  • オプトキャリア