理科大,水を利用した光変調器を開発

東京理科大学の研究グループは,水の界面上で発生するポッケルス効果から,巨大な光変調信号を取り出す方法を発見した(ニュースリリース)。

現在使用されている光変調器の多くはポッケルス効果を原理として動作しているが,ニオブ酸リチウム(LiNbO3)など比較的高価な電気光学結晶を用いる必要があり,より安価な代替技術の開発が望まれてきた。

光が屈折率の高い媒質から低い媒質へと進む場合,入射角が一定以上大きくなると全ての光が反射する全反射が起こる。この時全反射が起きた面の逆側にしみだすエバネッセント光の界面方向の波長は,高屈折率の媒質を伝わる光の波長と一致する。

また,低屈折率媒質である水とガラスにはさまれた高屈折率媒質である透明電極の中では,両端の反射率が高まり,入射する光の波が何回も往復し,電極の厚さと入射角で決まる共振器の一往復の長さが波長の整数倍と一致する光の波が強め合う共振現象が起こる。

研究グループは,これらの性質から,全反射が起きる角度で界面部分に対し光を入射することで,エバネッセント光が水のポッケルス効果による位相変化を感じ,共鳴(共振)する波長の条件が変化することで,巨大な光信号を取り出すことが可能と考えた。

実験では光を透過させるため,市販のガラス製透明電極基板で,電極薄膜として無色透明なITO(酸化インジウムスズ)およびTCO(透明導電性酸化物)が製膜されたものを選択した。

対極には白金板を採用し,透明電極ガラス基板を白金板と平行になるように配置して,両者を0.1MのNaCl水溶液中に浸した。この状態でガラス基板の薄い片側の端面から入射して反対側の端面から取り出すように白色光を入射させながら,振幅1~5V,223Hzの条件で交流電圧を加えて,光変調の度合いを測定した。

その結果,厚さ400nmのTCOを薄膜とした場合,波長675nm前後の狭い帯域で最大50%の巨大な光強度の変調が観測された。また厚さ330nmのITOを用いた場合では,強度の変調は波長575nm前後で最大となった。いずれの場合も,巨大な変調が発生する波長は狭い帯域に集中し,高い指向性を有することが分かった。

この結果は,電極の膜の厚さや素材を変えることで,変調が起きる光の波長を制御できることを示す。最適条件では,100%の変調が可能であることが理論的に示されているという。

これらの研究成果の特性により,水と透明電極による指向性ディスプレーや,固液界面の物性を探るプローブなどへの展開が考えられるという。また,厚さがnmオーダーと非常に薄いため,マイクロ流路や細胞などの微小領域を対象とした計測技術としても期待されるとしている。

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