キヤノンは,橋梁やトンネルなどの社会インフラ構造物の近接目視点検の代替手段として,画像とAIを活用した画像ベースインフラ構造物点検サービス「インスペクション EYE for インフラ」の提供を2019年12月下旬に開始する(ニュースリリース)。
現在の社会インフラ構造物は,高度経済成長期に建設されたものが多く,今後急速に老朽化することが懸念されている。国土交通省が定めている定期点検は,近接目視を基本としているため,時間と労力がかかる上,場所によっては足場を組む必要があり,コスト面や安全面で課題を抱えている。
このような背景から,国土交通省は2019年2月に橋梁とトンネルの点検要領を改訂し,高精細画像を使用した点検など,近接目視と同等の診断を行なうことができる方法による点検作業も認めた。インフラ構造物の状況を高精細画像で記録することにより,近接目視点検では発見することが難しいわずかな変状も発見できるようになり,劣化の兆候をいち早く察知することが可能になる。
こうした中,同社は豊富なカメラ・レンズ群による高精細画像の撮影,カメラメーカーとして長年にわたり蓄積した技術を生かした画像処理,AIを活用した変状検知という3つのサービスから構成される「インスペクション EYE for インフラ」の提供を開始し,インフラ構造物点検事業に参入する。
提供する撮影・画像処理・変状検知のサービスのうち変状検知サービスは,同社と画像を使用したインフラ構造物点検に15年以上の実績を持つ東設土木コンサルタントの研究グループが開発した変状検知AIを使って,点検対象物の変状(ひび割れなど)を検知する。
変状検知AIは幅0.05mmのひび割れも検知でき,ひび割れと間違いやすい特徴が多くある汚れた壁面などでも,ひび割れだけを検知することが可能となる。ある道路高架橋のRC床版においては,近接目視で見つけたひび割れの約99%を検知するとともに,近接目視で見逃されたひび割れも検知でき,合計すると近接目視の2倍以上の本数のひび割れを正しく検知する。
また東設土木コンサルタントとジーテックが開発した変状展開図作成・管理支援ツール「CrackDraw21」とのデータ連携により,AIによる変状検知結果はCADデータとともにデータベースで管理することが可能で,点検調書の作成や補修計画の策定など,実務への展開を容易にするという。
同社は今後も画像・映像を使ったソリューションを定期点検だけでなく施工・維持管理などにも役立て,社会インフラ業界全体に貢献していくとしている。