関西学院の研究グループは,植物成長を促進するプラスチック(右巻きの光を発するプラスチック)を開発した(ニュースリリース)。
植物は青または橙赤色の光をよく吸収して成長する。中でも,それらの右円偏光をよく吸収する。研究グループの合成したモノマーとポリマーは,植物にとっても有害な紫外光を吸収し,青色の右円偏光を高輝度で発する材料となる。
合成したモノマーの1つはスチレン誘導体で,さまざまなビニルモノマーとの共重合で多種多様なプラスチックの開発が実現できる。また,二官能性モノマーの合成(例えばビスフェノール型モノマー)も容易で,ポリカーボネート・ポリウレタン・ポリエステル・ポリアミドなど,さまざまなエンジニアリングプラスチック開発へと展開できる。いずれも,鍵モノマーの導入量は1~0.1mol%程度の極めて少量でよくコストを抑えることができるという。
また,得られるプラスチックは太陽光(の紫外光)により励起されて発光するため,LEDと異なり電源を必要としない。シートやプラスチックケース等で植物を覆うだけでなく,植物のそばの壁や木材など光の当たるところにコーティングするだけでも成長効果が期待できる。なお,電気により発光させることも可能という。
研究グループは,今回開発した材料は熱・光・酸・塩基・空気・水に対して安定で,官能基の導入による発光色の制御も容易(橙赤色発光も実現容易)であるなど実用性が高く,一方,左巻きの円偏光は植物の成長を抑制するため,ミラーイメージのモノマーを用いれば,雑草などの植物成長を抑制するプラスチックも開発できるとしている。