産総研ら,温度で透過光量を制御するガラスを開発

産業技術総合研究所(産総研)は,神戸市立工業高等専門学校,大阪有機化学工業と共同で,液晶と高分子の複合材料を開発した(ニュースリリース)。

液晶を用いた調光ガラスは,電気で制御するタイプが既に上市され,フィルム化もされている。しかし,透明と白濁の切り換え特性を活用して,光の全透過率を制御するという試みは,これまで成功していなかった。

特に省エネ用途では白濁時に全透過率を下げる必要があるが,それには光を入射方向とは反対の方向に散乱(後方散乱)させる内部構造を有する材料を作らなければならない。しかし,温度によって後方散乱が変化する熱応答型の液晶複合材料の開発は格段に難しかった。

今回,高分子ネットワーク液晶(PNLC)と呼ばれる液晶と高分子からなる複合材料を,2枚のガラス基板ではさんだ構造の調光ガラスを開発した。この調光ガラスは,液晶,モノマー(高分子の原料),重合開始剤の混合原料を2枚のガラス基板の間隙に満たし,紫外光を照射して重合させて作製される。

今回,光重合で形成されるPNLCの微細な構造を詳しく調べ,白濁状態では後方散乱が生じて,透明と白濁の切り換えによって,全透過率が大きく変化するPNLCの構造を見出した。

PNLCの全透過率は試料前方に散乱した全ての光を検出した際の透過率で,今回開発したPNLCは20%以上の変化幅を示した。この変化幅は,すでに実用化されている液系の調光ガラスと比べても引けを取らないという。この全透過率は,窓を想定した場合,窓への太陽光の全照射量に対する室内入射量の相対値に相当し,透明時と白濁時での全透過率の差が省エネの指標となる。

また,透明状態での直進透過率は,従来の熱応答型の液晶複合材料並みの70%を上回る値を達成した。直進透過率は,入射光と同じ直進方向(ここでは拡がり角10度の範囲)の光強度をもとに算出した透過率で,透明さ(白濁の少なさ)の指標となる。

このPNLCの直進透過率は,太陽光を受けた際の窓ガラスの昇温速度に十分追従して変化できる。例えば,今回のガラス基板で挟んだ材料の温度を30℃から50℃に上げると,直進透過率は30秒以内に80%以上から10%以下に下がるという。

研究グループは,今回開発したPNLCは,暖冷房負荷低減に有効な生活温度(今回の試料では35℃)付近で調光が可能であるため,ガラスへ組み込めば省エネ窓ガラスとして期待できるとしている。

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