日本触媒ら,EL光源を水素結合で長寿命化

日本触媒はNHKと共同で,「紙より薄いフィルム光源(iOLED®フィルム光源)」をさらに長寿命化させる新しい電子注入技術を開発した(ニュースリリース)。

紙より薄く,柔軟性の高いiOLEDフィルム光源は,同社がNHKと共同で開発している大気中の酸素や水分に強く安定性の高い有機ELの材料および素子技術(iOLED技術)により実現している。しかし,さらなる長寿命化には,一定の酸素や水分の存在下で高効率な電子注入を長期間維持することが課題だった。

一般に電子輸送層の電子注入機能付与のために用いられるアルカリ金属は,高い電子注入性を示す一方,大気安定性に乏しく,有機ELの劣化の主要因となっている。

今回,同社はアルカリ金属の代わりに有機塩基性材料を添加した,分極型の有機EL用材料を開発した。この材料は高い大気安定性と分極による高い電子注入性を示すため,酸素や水分を透過しやすいフィルム上に有機ELを形成しても,高い電子注入が長期間維持できる。

さらに,有機塩基性材料の添加により水素結合が形成され,これにより生じる分極が,電子注入に重要な役割を果たしていることを世界で初めて確認したという。

同社はこの技術により,iOLEDフィルム光源が素子寿命と大気安定性を従来よりも高水準で両立できるようになり,使用用途の拡大が期待できるとしている。

その他関連ニュース

  • 富山大,最小電圧駆動有機ELの駆動機構の一部を解明 2024年11月01日
  • 東工大,分子の自発配向を利用した分極薄膜を開発 2024年10月31日
  • ソニーら,eスポーツ用高速表示有機ELモニター発売 2024年09月30日
  • ソニー,業界最小のOLEDマイクロディスプレー開発 2024年09月24日
  • 東陽テクニカら,有機EL素子の超低輝度検査技術開発 2024年09月12日
  • 東工大ら,青色有機ELの電子移動が可能なことを実証 2024年08月21日
  • 農工大ら,劣化の一因を抑制した有機ELデバイス開発 2024年07月23日
  • ブイテク子会社,オリジナル青色有機EL材料を開発 2024年07月18日