矢野経済研究所は,国内の製造業向けプラントO&M(Operation&Maintenance)サービス市場を調査し,市場動向や主要プレイヤーの動向,将来展望について明らかにした(ニュースリリース)。
これによると,日本国内における2018年度の製造業向けプラントO&M(Operation&Maintenance)サービスの市場規模(事業者売上高ベース)は,前年度比100.6%の905,550百万円と推計する。
高度経済成長期に建設されたプラントが次々と稼働開始から50年を越える中,老朽化による設備の破損や部品の経年劣化などによる事故や操業トラブルが懸念されている。これらの発生リスクを低減する方法として,日常的な点検やメンテナンスなどの重要性が高まっており,プラントメンテナンスの需要が増加している。
また,プラントオーナーは自社内のベテラン社員の退職や人手不足を理由に,外部のエンジニアリング会社やプラントメンテナンス会社に委託する保全業務の対象範囲を広げている。その結果,エンジニアリング会社やプラントメンテナンス会社によっては,設備点検などの現場作業に止まらず,保全業務全般に係る計画の立案や管理・遂行までトータルでサポートを行なう事例が増えてきているという。
注目トピックとして,IoTに代表される新しい技術を活用して,人手に依存していたO&M業務の効率化や,作業品質の向上,効果的な技術・技能の継承などを図る企業の動きが活発化を挙げている。
IoT技術については導入実績が増え,点検業務の省人化やリアルタイムでの設備の状態監視,データ蓄積によるトラブルの原因究明などに活用できる技術として,保全業務のスマート(IoT)化を検討する企業が増加している。さらに,自社でIoT用デバイスを開発するエンジニアリング会社が出てきているという。
その他,ドローンはオープンなスペースでの点検など,導入ハードルが低い場面で活用が始まっている。クラウドは,遠隔でのデータ蓄積・解析による状態監視や設備診断などに用いられ,レーザースキャンを用いてプラントの3Dデータを取得する取り組みも広がっている。
AIは多くの企業がデータ解析のツールとして関心を示しているが,保全業務の実務に適用している事例はまだ限られ,その理由としてはデータ解析モデルの開発の難しさや解析対象となる蓄積データの不足などを挙げている。
今後,プラントの老朽化がますます進行することで,トラブルの発生リスクが高まる。些細なトラブルであっても,生産ラインの稼働率に影響を及ぼす可能性があるため,プラントオーナーにとって,いかに「設備に異常を発生させないか」「設備に異常が発生しても,その影響を最小限に食い止めること」は重要な課題となるという。
こうしたことから,プラントメンテナンスの重要性がさらに高まり,日本国内の製造業向けプラントO&Mサービス市場規模(事業者売上高ベース)は,2020年度に914,250百万円,2022年度には927,300百万円まで拡大すると予測している。
技術開発の進展に伴い,IoTなどの新しい技術を適用したサービスは,開発・投入の動きがますます加速する可能性が高いとみる。その中で,新しい技術を使いこなすノウハウの有無が,エンジニアリング会社やプラントメンテナンス会社の競争力に影響を与えるとしている。