京大ら,角膜内皮再生医療の新しい数値指標を開発

京都大学と京都府立医科大学は,角膜など再生医療に用いる「培養している移植用細胞の品質」と「移植してからの組織の予後」の両方を統合的に評価できる,新しい数値指標を開発した(ニュースリリース)。

これまで,角膜が混濁しはじめ視力が低下する「水疱性角膜症」の治療法は,ヒトの角膜内皮細胞は生体内では増殖できないため,侵襲性の高いドナー角膜を用いた角膜移植しかなかった。

研究グループは,体外で培養したヒト角膜内皮細胞を眼の中に注入して角膜内皮を再生するという,角膜移植に代わる新たな治療法を提案し,医師主導治験を行なっている。この新しい再生医療の実用化には「移植前の培養細胞の品質をどう管理するか」「細胞の品質と移植後の角膜の予後をどうつなげるか」が非常に重要になる。

現在,培養細胞の品質評価は細胞表面のタンパク質発現パターン等から行なっているが,その評価のたびに10万個の細胞が失われる。一方,臨床現場での角膜内皮の画像診断には経験に則って求められた指標(細胞の密度,細胞サイズのばらつき,六角形の細胞の割合)が現在使われているが,培養細胞の評価基準とのつながりはない。

今回,研究グループはこれまで注目されてこなかった「細胞の集団としての秩序(そろい方)」に着目,微粒子などを扱う「コロイド物理」を駆使し,隣り合った細胞だけでなく全ての細胞ペアの相互作用の強さを数値化し,「移植前の培養細胞の品質管理」と「治療後の再生角膜の予後評価」を統一して同じ式を使って行なえる,新しい物理マーカーを確立した。

今回用いた指標は,細胞の輪郭さえわかれば計算可能なため,移植前の細胞は培養皿を顕微鏡にのせるだけで簡単に撮れる画像を,また移植後の角膜の評価には眼科検査で撮影した画像を用いるため,細胞のロスも患者への負担もないという。

研究グループは今回の研究で,移植後6か月の角膜の画像から2年後の予後を予測することができたため,悪くなる前(未病)の段階で治療を行なう「先制医療」への展開が期待できるとしている。

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