京都大学と慶応義塾大学は,三鷹光器,パナソニックコネクティッドソリューションズと共同で,「手術用の高精細(4K)3Dビデオ蛍光顕微鏡」を開発した(ニュースリリース)。
従来の顕微鏡を使った手術では,レンズを長時間にわたって覗かなければならず,術者の首や腕のしびれの原因となっていた。また,助手が術者と同じ視野を共有できず,技術伝承の妨げにもなっていた。
今回開発した装置は,遠方からズームをかけることにより,高倍率で双眼による3Dの4K画像をモニター上に映し出すことができる。4Kビデオカメラの対物レンズの双眼の間隔を35mmとして,手術部位から1m近い高さにまでにあげて使用し,ズームイン−ズームアウトにより,肉眼から顕微鏡の強拡大視野までをシームレスに3Dモニターに表示する。
また,手術部位とレンズの間隔が約1mと離れているため,従来のビデオ顕微鏡では作れないワーキングスペースができる。これにより術者と助手が手術している部位を同一画面で見ながら相互操作することができ,教育効果の向上にも貢献するという。
今回,光学レンズと4Kカメラを組み合わせ,被写界深度と解像度を両立させた。術者が頭を上げた状態で楽な姿勢で手術を行ない,レンズの倍率を速やかに調整することができるため,手術では,弱拡大から強拡大の視野までスムーズに対応できる。今まで顕微鏡で拡大する必要のあった手術から,外科用ルーペを用いて行なっていた弱拡大が必要な手術まで,さまざまな領域の手術に対応する。
さらに,この装置は組織や血管内の血液の流れや腫瘍(がん)を蛍光画像として3Dモニターにリアルタイムに重ねて表示することができるため,腫瘍の位置や手術の出来具合を確認しながら安全に手術を行なうことができるという。
研究グループは今後,2019年に医療機器として届出・上市する製品の量産化を準備し,2020年以降に国内での販売を強化する。海外では,2021年米国市場で,2022年には中国市場で上市する予定としている。