日本メナード化粧品は,シンクロトロン光によるX線散乱測定技術を応用することで,皮膚組織に存在するコラーゲンをそのままの状態を保持させたまま,微細な構造を解析する技術を開発した(ニュースリリース)。
コラーゲン線維はたんぱく質の一種で,皮膚の真皮の約70%を占めている。コラーゲン線維の構造をナノレベルで観察することは,シワ,タルミのない肌の研究において重要な手法の1つ。
しかし,電子顕微鏡で観察するためには,真空状態で壊れないように水分を除去する必要があるため,本来のコラーゲンの構造に変化が生じてしまい,生体内での本来の構造を解析することが困難だった。
X線散乱測定を用いた場合でもナノレベルの小さな構造を調べることができるが,コラーゲン線維の構造を調べる場合,わずかしか方向を変えない微弱なX線を正確に読み取る必要がある。そこで,非常に強力で,レーザーのような鋭い指向性,平行性を持つ(高指向性)シンクロトロン光をX線源として利用し,コラーゲン線維のX線散乱を測定した。
X線散乱測定の場合,電子顕微鏡のような真空状態にすることなく試料の観察が行なうことができる。加えて導電性を与える前処理も必要ないので,より生体に近い状態のコラーゲンの線維構造が解析できるようになったという。
さらにX線散乱測定では,X線を照射した領域で発生する散乱X線をまとめて評価するため,広い範囲の平均データを一度に得ることができる。結果が数値で得られるため,例えば,加齢によるコラーゲンの質的変化を数値化して老化状態を把握することも容易になるとしている。