がん研究会ら,光線力学療法の効率向上に知見

がん研究会がん化学療法センターとSBIファーマは,JFCR39がん細胞株パネルを用いて,がんの光線力学診断や治療に利用されている5-アミノレブリン酸(5-ALA)から生合成されるプロトポルフィリンIX(PpIX)の細胞外排出に,細胞のエンドサイトーシスとエキソサイトーシスに機能するダイナミン2が重要な役割を果たしていることを発見した(ニュースリリース)。

5-ALAは,さまざまながんの光線力学診断(ALA-PDD)や治療(ALA-PDT)に利用されている。5-ALAは細胞に投与すると細胞内に取り込まれ,ミトコンドリアでヘムが生合成される。

ところが,増殖の速いがん細胞ではミトコンドリアにおける酸化的リン酸化の効率が悪いため5-ALAから効果的にヘムを生合成することができず,前駆体のプロトポルフィリンIX(PpIX)が細胞内に蓄積される。

PpIXは紫色の光を当てると赤色蛍光を発するため,がん細胞を検出することが可能となる。5-ALAを用いたがんの診断や治療の効率を上げるためには,5-ALAから生合成されるPpIXの細胞内蓄積を高める必要があり,PpIXを細胞外排出する細胞膜トランスポーターの研究が行なわれてきた。

その結果,主要なABCトランスポーターであり多剤耐性因子MDR2としても知られるABCG2がPpIXの細胞外排出に働く因子として同定され,PpIXの蓄積量を上昇させるための標的分子として注目を浴びた。しかし,その特異的阻害剤では細胞外排出を完全に止めることができないことがわかり,排出メカニズムの全貌の解明が望まれている。

今回の研究では,がん研究所がん化学療法センターが樹立したJFCR39がん細胞株パネルを用いて,5-ALAから生合成されるPpIXの細胞外排出に,物質を細胞に取り込む過程のエンドサイトーシスと排出する過程のエキソサイトーシスに機能する,輸送小胞の形成を担う遺伝子ダイナミン2が重要な役割を果たしていることを発見した。

この結果は,5-ALAを用いる光線力学診断や治療の効率を高める方法として,ダイナミン2阻害剤の応用の可能性を示唆するものだとしている。

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