京都大学,名古屋市立大学,ブルネイ・ダルサラーム大学らの研究グループは,独自の高純度化前駆体材料を開発し,これを用いることで汎用性の高い塗工プロセスで高品質なペロブスカイト薄膜が作製できることを見出した(ニュースリリース)。
次世代の高効率太陽電池として注目されている高性能なペロブスカイト太陽電池を作製するためには,いかに高品質なペロブスカイト半導体膜を作製できるかが重要。
これまでに高性能小型太陽電池セル(2.5cm角)を作製するために一般的に用いられいるペロブスカイト薄膜の成膜法は,スピンコート法で材料の溶液を塗布する際に,膜が乾いてしまう前に貧溶媒を滴下するというものだった。
太陽電池の実用化を見据えた大面積塗工への展開では,より塗工プロセス幅が広く,ロールtoロール法など他の印刷技術へも広く展開できる汎用性の高い塗布方法が強く求められている。
研究グループはこれまでに,ペロブスカイト薄膜の高純度化材料として,精製ヨウ化鉛(PbI2)を開発し,すでに国内材料メーカー(東京化成工業)より市販化され,この太陽電池の研究分野で標準材料として利用されている。
また,研究グループは第2世代の高純度化前駆体材料として,ハロゲン化鉛ペロブスカイト(CH3NH3PbI3)のDMF錯体を開発した。この錯体は,従来の材料(ヨウ化鉛(PbI2)とヨウ化メチルアンモニウム(CH3NH3I)の1:1の混合物)に比べて,高い純度(99.998%)を持つことに加えて,一般的な溶媒に「早く」かつ「よく」溶けるといった特長を持つ。
その一方で,スピンコート条件下では,これまでと比べて膜が乾燥し始める時間が50秒以上も遅くなることを見出し,大面積塗工技術にも展開可能な「ゆっくり」塗布プロセスの開発に成功した。
これにより,これまで研究ベースで作製してきた0.1cm2サイズの高性能太陽電池セルを再現性良く作製できるだけでなく,より大きな面積の太陽電池の作製も可能になる。その一例として,22cm2のサイズで電圧8.64V(1.08V/セル)の出力をもち,14.2%の光電変換効率を示す8個のセルが直列に連結したサブモジュール太陽電池の作製に成功した。
塗工プロセス幅が広い今回の手法は,広い面積のペロブスカイト薄膜の成膜も可能にし,これにより,研究用の0.1cm2のサイズの太陽電池セルから22cm2の太陽電池モジュールへと,より大きな高性能デバイスの作製が可能になったという。
研究グループは,今回の成果は,ペロブスカイト半導体薄膜の塗布作製法に新潮流をもたらすとともに,印刷技術を用いた大面積モジュールの作製にも道を拓くものとしている。