富士フイルムは,同社内視鏡製品の生産拠点である「富士フイルムテクノプロダクツ佐野工場」内に,AIやIoT技術を用いることで生産効率を大幅に高めた新工場を建設し,今年9月より本格稼働させる(ニュースリリース)。
内視鏡は,体内を直接観察でき,患者の身体的負担が少ない治療が可能なことから,近年グローバルで需要が拡大している。
同社は,臓器の粘膜表層の微細な血管や構造などを強調して表示する機能「BLI」や,画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調する機能「LCI」などの画像強調機能を用いて,炎症の診断や,微小な病変の発見をサポートする内視鏡システム「レザリオ」や「6000システム」などを国内外に提供している。
内視鏡スコープは,患者の体内に挿入し,検査・治療を行なうという特性上,製造には微細で高精度な加工技術が求められる。また,操作性や挿入性,耐久性など多岐にわたる性能を持たせることから,その製造工程は非常に複雑となる。急増する需要に対応するためには,生産能力の向上が必要だが,微小なレンズの取付作業や,内視鏡映像のピントや色などの目視検査など,熟練者のノウハウや卓越した技能が求められるため,生産効率を大幅に上げることが非常に困難だった。
今回新設する内視鏡スコープの生産工場は,工場内の人やモノの動き,設備状態をIoTで管理する最新のスマート工場となる。
これまでシステムで管理していた作業工数,製造・検査の記録,部品在庫などのデータに加えて,工場内のさまざまな箇所に配置したセンサーで,設備の稼働状況,作業員の動線などの情報を取得し,1つのプラットフォームに集約。設備の故障予知,生産進捗などの状況を,リアルタイムかつ統合的に把握することで,効率化に向けた分析・改善サイクルの高速化を実現するという。
また,熟練者が目視検査している内視鏡映像の判断基準をAIに学習させ,映像検査工程を自動化することで,検査工数を大幅に削減する。さらに,熟練者の作業をビデオカメラで撮影し,センサーで得られた補助情報と重ね合わせてスマートグラスに映すなど,現場作業を支援することで,作業の大幅な効率化と安定品質を両立する。
新工場では,波長の異なる2種類の光を用いた特殊光観察で,微小な病変の発見をサポートする同社の内視鏡システム「レザリオ」や「6000システム」に対応した内視鏡スコープを生産する。なお,今回の建設の投資額は約40億円で,同拠点での内視鏡スコープの生産能力を従来の2倍にするとしている。