理研ら,光血栓法で脳損傷を軽減する仕組みを解明

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理化学研究所(理研),慶應義塾大学らの研究グループは,マウスを用いた研究から,脳内のカリウムイオン(K+)の排出(クリアランス)機構を促進することにより,虚血(血栓や出血などにより血液の循環が滞り,臓器への血液供給が途絶える状態)後の脳損傷を軽減する仕組みを解明した(ニュースリリース)。

脳卒中や外傷性脳損傷などの脳血管障害では,多くの場合,障害発生部位だけでなく健康な部位にまで損傷が拡大する。この損傷拡大には,主に脳内の細胞外のK+濃度の急上昇が引き金となることが知られている。

今回,研究グループは,レーザーを用いた光血栓法(色素を血中に導入した状態で,緑色光を照射することにより血栓を生じさせ,局所的な脳梗塞を誘導する方法)によって,ノルアドレナリンと呼ばれる神経伝達物質の受容体(アドレナリン受容体)を阻害すると,脳梗塞後の神経保護と脳機能回復の効果があることを見いだした。

脳梗塞に伴う脳内の水の動きの変化を詳しく調べるために,主に脳を構成するグリア細胞の一種であるアストロサイトに発現する,水分子の透過を担う膜タンパク質である「アクアポリン4」のみを蛍光物質で標識する手法(免疫組織化学染色法)を用いて,脳内のアクアポリン4の分布を可視化した。

その結果,アドレナリン受容体の阻害によって,アストロサイトにおけるアクアポリン4の局在が確保され,K+濃度の正常化が促進されることを見いだした。

以上の結果から,研究グループは,「アドレナリン受容体の阻害によってアクアポリン4の局在が確保され,脳脊髄液の移動によって,K+濃度を正常化し,神経保護と脳機能回復を促進する」という排出(クリアランス)のモデルを提案した。

研究グループは,今回の研究成果は,さまざまな脳血管障害に共通して生じる組織損傷のメカニズムの解明とその治療法の開発に貢献するだけでなく,将来的に,細胞外K+濃度の正常化を標的とした脳梗塞の早期対処法を開発するための橋渡しとなることが期待できるとしている。

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