NEDOら,革新的機能性材料開発シミュレーターを公開

著者: admin

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と産業技術総合研究所,先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)は,革新的機能性材料の開発を支援するためのシミュレーターを開発した(ニュースリリース)。

機能性材料には大幅な省エネ性能や複合化による多種類の機能の発現といった性能向上が期待されているが,従来の機能性材料開発は,これまで蓄積してきた材料の構造や物性,触媒を含む反応経路などの実験・評価データを使い,「経験と勘」に基づく仮説を立てて,それを実験によって検証しながら進められてきた。

しかし,その手法は長期の開発期間を要するため,国内素材産業の革新的な材料開発基盤技術を構築するための足かせとなっていた。

今回,開発したシミュレーターは,「誘電材料」「複合材を含む高分子材料」「機能性化成品(触媒など)」「ナノカーボン材料」「半導体材料」などの幅広い有機・高分子系機能性材料を主な対象としている。

これらは,求められる特性が多岐にわたるため,用いるシミュレーション手法も,第1原理計算から分子動力学,粗視化シミュレーション,流体解析などさまざまで,対象とする空間/時間スケールも広範で,1つの計算シミュレーターですべてをカバーすることは不可能。

そこでNEDOらは,9つの機能別シミュレーターを開発した。このうち,「電気・光などのキャリア輸送シミュレーター」は,第一原理計算による電気や光などのキャリア輸送特性の予測機能を持つ。1μmスケールのチャネル材料を含んだデバイス系の電圧-電流特性予測や,ナノ粒子の光学特性予測ができる。これらを利用して,さまざまな手法で異なる材料の機能・物性を予測し,有機・高分子系機能性材料の広い範囲で材料設計が可能だとする。

今後NEDOは,これらのシミュレーターの機能拡張や高速化を進め,継続的なブラッシュアップを図ることで,先端材料の試作期間・開発期間を従来比1/20に削減・短縮することを目指す。また,4月1日には,このシミュレーターの利用を促進するため,このシミュレーターを用いた機能性材料開発に関する助成事業の公募を予告,5月中旬に公募を開始する予定としている。

キーワード:

関連記事

  • 北大,バンドギャップ予測可能なペロブスカイト設計

    北海道大学の研究グループは,機械学習によってバンドギャップ(光吸収の指標)を精密に予測・設計できるペロブスカイト無機材料の開発手法を確立した(ニュースリリース)。 近年,マテリアルズインフォマティクスの発展により,機械学 […]

    2025.08.21
  • 東大ら,薄膜物質を自動・自律合成するシステム構築

    東大ら,薄膜物質を自動・自律合成するシステム構築

    東京大学,東京科学大学,日本電子,堀場製作所,リガク,島津製作所,デンソーウェーブ,パスカル,テクトスは,機械学習とロボット技術を活用した自動・自律実験システム(デジタルラボラトリー)を構築し,研究者が指定した物質を自動 […]

    2025.05.21
  • 東工大ら,機械学習で光デバイスの材料探索支援

    東京工業大学と産業技術総合研究所は,高精度と高速を両立させた最先端の第一原理計算により生成した大規模な理論計算データおよび機械学習を用いて,無機材料表面の基本的な電子構造を網羅的に予測することに成功した(ニュースリリース […]

    2024.04.01
  • 統数研ら,準結晶を予測する機械学習技術を開発

    統計数理研究所(統数研),東京理科大学,東京大学は,これまでに合成されてきた準結晶や関連物質のパターンを読み解き,熱的に安定な準結晶を形成する化学組成を予測する機械学習技術を開発した(ニュースリリース)。 準結晶は,通常 […]

    2023.09.29
  • キーサイト,コボット支援型LiDARシミュレータ発売

    米キーサイト・テクノロジーズは,自動車メーカーやLiDARセンサーメーカーが自動運転車(AV)用のLiDARセンサーのテストと検証を可能にする「E8717A LiDARターゲットシミュレーター(LTS)」を発表した(ニュ […]

    2023.09.28
  • ROISら,高分子合成をコンピュータで生成可能に

    統計数理研究所(ROIS)とダイセルは,高分子合成において広く用いられる重合反応のルールを網羅的に実装した仮想高分子生成モデル「SMiPoly」を開発し,オープンソースソフトウェアとして公開した(ニュースリリース)。 現 […]

    2023.08.31
  • 北大,化学反応創成プラットフォームを開発

    北海道大学は,化学反応経路の幅広い活用と社会への普及を目途に,人工力誘起反応法(AFIR法)から生み出された化学反応経路データを,ソフト等を一切インストールすることなく,ウェブ上でクリックのみで検索,可視化,探索,設計を […]

    2023.07.06
  • 東大ら,一部の情報から全電子構造を決定

    東京大学,防衛大学,東北大学は,基底状態にあるすべての電子構造(全電子構造)を人工知能で予測する手法を開発した(ニュースリリース)。 半導体や電池,触媒などの物質の機能は,安定な基底状態の電子構造によって支配されており, […]

    2023.05.19
  • オプトキャリア