関西学院大学と英エクセター大学は,高次のトポロジカル状態における,新しい電子伝導の制御機構を提案した(ニュースリリース)。
近年,電子エネルギーバンド構造の位相幾何学(トポロジー)的な性質から,電子材料を区別し,新しい電子相を有する物質を探索する研究が,世界中で行なわれている。特に,トポロジカル絶縁体と呼ばれる物質では,物質の表面やエッジなどの境界面において,無散逸なスピン流が現れることが知られている。この特性を利用することで,超低消費電力の電子デバイスや量子計算素子への応用が期待されている。
従来から知られているトポロジカル絶縁体では,スピン軌道相互作用が重要な役割を果たしている。今回研究グループは,スピン軌道相互作用を導入せずに,高次のトポロジカル状態を実現する物質群の理論設計指針を提示した。
これにより,高次のトポロジカル状態において,エッジに沿って電流が散逸をせずに完全に伝導する機構があるだけでなく,その逆の極限である,電子をコーナーに強く局在させる機構も併存させることが可能であることを見出した。また,スピン軌道相互作用を導入せずに,高次のトポロジカル状態を実現する理論的な枠組みも提示した。
研究グループは,散乱を受けにくい電流が表面やエッジで流れるため,超低消費電力の光・電子デバイスや量子計算素子への応用が期待されると共に,コーナー状態を利用することで,光や電子を空間的に閉じ込める量子ドットや光共振器を設計することが可能になるとしている。
この原理は,広く2次元の電子材料に適用でき,スピン軌道相互作用を必要としないため,フォトニック結晶に対しても適用可能。今後,この理論指針にしたがった物質設計およびデバイス設計が期待されるとしている。