東大,切り取り可能なワイヤレス充電シートを開発

東京大学の研究グループは,ユーザーが望む形状に切って貼り付けるだけでワイヤレス充電を実現できるシートを開発した(ニュースリリース)。

ワイヤレス充電用のコイルを家具や衣類などの製品に組み込む場合,まず製品の形状を決めた後に,コイルアレーを設計・実装する手法が主流だった。しかし,このようなコイルアレーを用いた手法では,形に合わせた配線と磁気的干渉を考慮したコイルの配置・設計が必要なため,高周波回路の知識と多くの時間・労力が必要だった。

開発した磁界共振結合方式を用いたワイヤレス充電シートは,既存の家具や衣類などの形状に合わせて切断し貼り付けることで,ワイヤレス充電機能を持たせることができる。形状に合わせてコイルを必要な数だけ並べる方式とは異なり,あらかじめ定型で用意したコイルアレーから不要なコイルを減らす点に新規性があるという。

シートを切り取り,既存の家具や衣類に貼り付ける場合,シートの切断は外側から行なわれる。しかし,これまでのワイヤレス充電シートはコイルアレーをマトリックス状に配線したものが多く,切断すると縦横に接続されたコイルの一部が機能しなくなる問題があった。

そこで,電源部が切断されないよう電源をシート中央に配置し,H木型配線を利用して中央から外側に向かって配線した。この配線により,切断後もコイルアレーに電流が行き渡る。また,H木型配線は電源から各コイルまでの配線の長さを等しくするため,高周波回路特有の,電源から見た各コイルのインピーダンスのばらつきを抑えることができる。

これにより,コイルをなるべく密に配置することでシート上のどこに受電器を置いても給電が可能。一方で,コイルが密接になればなるほど,コイルの磁気的干渉が強くなり,給電効率に悪影響を及ぼす。そこで,同時にオンとなるコイル同士が距離を保つ,時分割給電を用いた。コイルアレーを互いに隣り合わないコイル同士でグループ分けし,グループごとに給電を繰り返すことで,隣り合うコイル間の磁気的干渉を回避する。

実験で開発したシートの大きさは400mm×400mmのフレキシブル基板。重さは82g。人体への影響が小さいとされる,数百kHzから数MHzの磁界を用いてコイル間で電力をやりとりしながら,最大5W程度まで電力を送ることが可能だとする。

この提案手法により,家具や鞄・衣服,収納ボックスなどの生活用品にワイヤレス充電機能を気軽に付与することが期待できる。今後は,印刷エレクトロニクス技術を活用し,シート内の配線と素子を一括で印刷する研究に取り組んでいくとしている。

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