大阪大学は,フッ素樹脂であるテフロン(PTFE)とシリコーン樹脂(PDMS)の強力接着を実現した。さらに,その技術を応用して,「フッ素樹脂と金属」および「フッ素樹脂とガラス」を接着剤無しで強力に接着する技術を世界で初めて開発した(ニュースリリース)。
これまでは,金属ナトリウム(Na)を含む危険な薬剤を使用してフッ素樹脂の接着性を向上させた上で,接着剤を使用してフッ素樹脂と金属およびフッ素樹脂とガラスとが接着されていた。しかし,その薬剤は作業者にも環境にも有害であり,さらに接着剤を使用して接着していたためVOCの問題があり,安全性が重視される医療分野や食品分野ではその利用が懸念されていた。
VOCとは,揮発(蒸発)しやすい性質を持つ有機化合物の総称で,代表的な物質は,塗料,印刷インキ,接着剤,洗浄剤,ガソリン,シンナーなどに含まれるベンゼン,トルエン,キシレン,酢酸エチルなど。発がん性物質や光化学スモッグの発生源であるため,環境省が2006年からVOC排出量を規制している。
研究グループは,高分子材料(プラスチックやゴム等)の表面に大気圧プラズマを照射し,表面を活性化して異種材料同士の接着性を向上させる研究に取り組んできた。これまでにフッ素樹脂側のみにプラズマ処理を実施し,フッ素樹脂と未加硫ゴムとの強力接着を実現していた。
今回はフッ素樹脂側とゴム側の両方にプラズマ処理を実施。加硫済ゴムであるシリコーン樹脂にもプラズマ処理することで,フッ素樹脂とシリコーン樹脂の強力接着を実現した。加硫済ゴムであってもプラズマ処理して表面にSi–OH基を導入すれば,シリカ粒子を添加した未加硫ゴムと同様に熱アシストプラズマ処理したフッ素樹脂との接着剤レス接着が可能であることが実証された。
さらに,プラズマ処理したシリコーン樹脂は金属やガラスと強力接着することが既に報告されているため,この従来技術と熱アシストプラズマ処理を組み合わせることにより,両面をプラズマ処理したシリコーン樹脂を介して「フッ素樹脂と金属」および「フッ素樹脂とガラス」の強力接着を実現した。
研究グループは今回の研究により,VOCを低減でき,かつ接着剤混入のリスクを回避できるため,医療・食品分野での応用が期待できるとしている。