北海道大学,東北大学,フィリピン科学技術省先端科学研究所,フィリピン大学が共同開発した,フィリピン共和国の第2号超小型衛星「DIWATA-2」は,2018年10月29日午後1時8分(日本時間)に種子島宇宙センターからH-IIAロケットによって打ち上げられ,地球周回軌道へと無事に分離された(ニュースリリース)。
DIWATA-2の打ち上げ後の運用はきわめて順調で,打ち上げの2週間後にはこの衛星の性能の高さを確認する画像撮影に成功した。
このプログラム「PHL-Microsat Program」は,2機の地球観測用超小型衛星の開発と打ち上げ,及びそこに搭載されたマルチスペクトルカメラなど先端的観測装置の効果的な利用を目的としたもの。2016年4月に国際宇宙ステーションより放出されたフィリピン共和国の第1号超小型衛星「DIWATA-1」へのコマンドの送信と画像の受信は,現在フィリピンのASTI局が行なっている。
DIWATA-1は宇宙への放出以降,3万枚を超える画像を取得している。特に超多波長スペクトルイメージャー(SMI)と呼ばれる装置は,全ての衛星の中で最多の波長選択性を持ち,植生や海洋の状態を従来よりもはるかに高い精度で計測できるという。
その機能を活かし,フィリピンで深刻な被害を出しているバナナの病気を,宇宙から検出することに世界で初めて成功するなどの顕著な成果をあげている。また目標物にカメラの視野を向ける技術を実証し,世界で最も高精度な雲の立体撮影を達成している。
DIWATA-1の機能と運用技術を向上させたDIWATA-2は,今後も世界最高の590波長スペクトルカメラによる広域撮影や,高精度・高速指向性能を活かした高解像度による任意の観測点の高頻度撮影(日に1回程度)など,5種類9台のカメラを用いた先端的な実利用の展開を行なっていく。
北海道大学・東北大学のグループは,超小型衛星を用いた国際共同ネットワークの構築を進めており,9カ国16機関が加盟するアジア・マイクロサテライト・コンソーシアムを主導している。近い将来,同グループの日本国内トップクラスの実績を活かし,各国が開発・保有する,数十機の高機能衛星を連携運用することで,世界初となる災害時の連続撮影観測を目指すとしている。