情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)と東日本電信電話(NTT東日本)と日本電信電話(NTT)は,東京都と千葉県に実証実験用として1波600Gb/sの伝送環境を構築し,そのフルスループット(伝送路で送受信可能な最大データ量)の確認,その上での汎用サーバを用いた587Gb/sデータ転送の実現,光波長変更と伝送レート変更による伝送経路変更実験に成功した(ニュースリリース)。
NIIでは,全都道府県や日米間を100Gb/s回線で結ぶ学術情報ネットワークSINET5を2016年4月から運用している。素粒子物理学,核融合学,天文学などの先端科学技術分野における大量データを各研究機関に転送し,分析を行なっている。現在,多数の研究機関が100Gb/sインターフェースでSINET5に接続しているが,そのデータ量の増加から,100Gb/s超に向けた更なる高速化対応が望まれている。
今回,600Gb/s伝送環境は,NTTが開発したデジタル信号処理技術,ならびに最大100GbEを6本多重可能なOTUCn技術を1チップに集積し,1波100Gb/s~600Gb/sの伝送レート可変トランスポンダを実現。NTT東日本の構築したネットワークで,600Gb/sのフルスループットを確認した。商用環境において約102kmファイバーを介した600Gb/s伝送は世界初という。
また,600Gb/s伝送環境下にて,MMCFTPを用いて1台のサーバから2台のサーバへの転送,および2台のサーバから1台のサーバへのデータ転送を行なった。実験の結果、587Gb/sおよび590Gb/sのデータ転送速度で40TByteのデータ転送に成功した。これはブルーレイディスク1,600枚分のデータを約9分で転送できることになる。この結果により1組のサーバで587Gb/sのデータ転送が可能な見込みを得た。
さらに,伝送距離の異なる2つの伝送経路を構成し,伝送路の障害を想定した経路切り替え実験を行ない,通信回線が再確立されることを確認した。データ転送では,経路切り替え前には600Gb/s波長で580Gb/sを計測し,経路切り替え後にはデータ転送が再開され,400Gb/s波長で393Gb/sのデータ転送速度を計測した。
最先端の学術研究では,扱うデータ量が爆発的に増加している。NIIでは,データ流通や大量の各種観測データを効率的に行なうためにも,MMCFTPの実利用を通じて安定化と更なる高速化を図っていくとしている。