NTTドコモ(ドコモ)は,ミリ波レーダー技術を開発する米スタートアップMetawave Corp.と連携し,第5世代移動通信方式(5G)の実現に向け,11月29日に,28GHz帯5G実験装置で構築された5Gトライアルサイト(東京都江東区)にて,メタマテリアル反射板を用いた5Gエリア拡大の実証実験に世界で初めて成功した(ニュースリリース)。
5Gで利用が想定される高い周波数帯では,基地局アンテナの見通し外のエリア構築が難しく,解決策として電波の反射の活用が期待されている。これまで電波を反射させる技術として金属反射板があったが,反射波の角度のコントロールには電波の入射角の向きを踏まえて金属板の設置をする必要があるため,街中への設置が難しく,郊外における特定の用途に限定されていた。
今回,ドコモが設置場所の選定・ビーム制御方向などを検討し,Metawaveが開発したメタマテリアル反射板は波長に対して非常に小さな構造体をアレー状に配置し,配置場所によって構造体を異なる形状とすることで反射波の方向やビーム形状を任意に設計することが可能なため,ビル壁面などに設置し特定の方向に反射波を誘導できる。これにより街中の設置場所も限定されることなく,高トラヒックエリアにおけるエリア拡大が可能となる。
実証実験では,5Gトライアルサイトにメタマテリアル反射板を設置し,5G基地局装置が設置されているビルの足元に5Gエリアを形成するための試験を,5G移動局を搭載した車両を走行させて実施した。結果としてメタマテリアル反射板の設置により約35mの範囲で通信品質が改善し,メタマテリアル反射板無しの場合にはスループットが60Mb/sだった足元のエリアが,メタマテリアル反射板からの反射波により560Mb/sとなり,良好な5Gエリアを35mの範囲で拡大できることを確認したという。