富士キメラ総研は,車載ディスプレーや次世代ディスプレーなどで高付加価値化が進むディスプレーの関連部材の世界市場を調査し,その結果を「2018 ディスプレイ関連市場の現状と将来展望(下巻)」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,2017年はOLEDが「iPhone X」に採用され,ハイエンドのTVでも採用した製品が増加したため,OLED関連部材の市場が大幅に拡大し,前年比44.8%増の1,589億円となった。しかし,OLEDは高コストなため,中国などのスマートフォンメーカーではLCD回帰の動きもみられるという。また,安定量産が可能なメーカーが増加していないなど,2018年,2019年は市場成長が鈍化すると予想。再び市場が大きく成長するのは中国メーカーの量産体制が整う2020年頃になるとみる。
タッチパネル関連部材は,今後大半の製品が横ばいになるとみるが,車載向けタッチパネルのカバーガラスは好調に推移するとみる。従来,車載向けタッチパネルのカバーは安全面から樹脂が主流であったが,見た目の綺麗さや質感から欧州の高級車ではガラスの採用が増えており,ガラスへの切り替えが進むとみる。また,日系自動車メーカーでもカバー材でガラスの採用が予定されているという。
個別の市場では,封止材(OLED用)が,2017年のiPhone XのOLED(同社は「フレキシブルOLED」と表記)採用により,特に薄膜封止用材料が伸長し,前年比2.4倍の629億円となったという。薄膜封止用材料は今後もOLEDの需要増加に伴い,伸長していくとみる。また,OLED向けだけではなく,OLED-TV向けも好調だという。TV向けは面積が大きいため,パネル1枚当たりの使用量が多い。OLED向けの薄膜封止用材料とOLED-TV向けがけん引し,2023年まで市場は二桁成長が続くとみる。
車載向けタッチパネルのカバーは上記の通りガラスの採用が増えており,2020年以降,量産体制が整うことで採用が増加するとみる。市場は2023年には2017年比4.2倍の628億円が予測する。現在,欧州の高級車ではおおむね強化深度の深いアルミノシリケートガラスが採用されているが今後,中国などで安価で加工性に優れるソーダライムガラスが増加するとしている。
透明ポリイミド(PI)は,AMOLED向けとして,隔壁(バンク)形成用の感光性PIワニス,フォルダブル用カバーシートなどで採用が検討されている透明PIフィルム,熱硬化性PIワニスを対象としている。感光性の透明PIワニスはほぼ全てのAMOLEDで採用されている。2019年は中小型向けでの需要が停滞するとみるが,LG DisplayのTV向けパネルなど面積の大きい製品での需要増加により市場は拡大していくとみる。
フォルダブルOLEDではカバーシートにハードコートを施した透明PIフィルムの採用が予定されており,設備投資,研究開発に注力するPIメーカーもみられるという。また,フォルダブルOLED向けでは屈曲性の高いタッチセンサー基材としても透明PIフィルムの需要が拡大するとしている。