キヤノンは,独自の3Dプリンター用セラミックス材料を用いて,複雑な形状のセラミックス部品を高精度に作製する技術を開発した(ニュースリリース)。
樹脂や金属などの材料を用いた3Dプリンターは,多品種少量の部品を手軽に試作・製造できるため,広く普及し始めている。しかし,これまでの3Dプリンター用セラミックス材料には樹脂を含むものが多く,造形後の焼成工程において20%程度の収縮が生じるため,高精度な部品作製が難しいとされていた。
今回,同社は3Dプリンターの造形法である選択的レーザー溶融法に適したアルミナ系セラミックス材料と部品作製技術を新たに開発した。レーザー溶融法とは,金属の造形で一般的に用いられ,材料にレーザーを照射する事で溶かして積層する3Dプリンターの造形法の一種。
今回の技術の活用により,一般に金型での成形や切削加工が難しい中空構造や多孔質構造など複雑な形状のセラミックス部品を3Dプリンターで安定的に作製できる。例えば,六角形の空孔をもつ直径約19mmのハニカム形状部品を作製した場合,焼成工程前後の外形寸法変化が0.8%未満の高精度な部品を作製することができるという。
同社は今後,セラミックスの優れた絶縁性・耐熱性・耐食性を生かし,今回の技術で作製したセラミックス部品が,産業機器をはじめとしたあらゆる分野で活用されることを期待するとしている。