日本電気(NEC)と産業技術総合研究所(産総研)は,産総研ナノエレクトロニクス研究部門内に「NEC-産総研 量子活用テクノロジー連携研究室」を設立することに合意した(ニュースリリース)。
今回新たに設立する研究室では,NECと産総研の研究開発力の融合を図り,量子アニーリングを始めとする量子性に基づいた先端技術領域の研究に注力し,量子コンピュータの研究開発を加速する。研究室は産総研つくばセンター内に2019年3月1日に設置する計画という。
NECは1999年に超電導固体素子を用いた量子ビットの動作実証に世界で初めて成功して以来,量子ビットや量子状態を制御するデバイス・回路の研究を継続してきた。現在は,従来技術をはるかに上回るスピードで組合せ最適化問題を計算できる量子アニーリングマシンの研究開発を進めている。
2018年10月には国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構による新規事業採択を受け,量子アニーリングマシンに関して産総研を含む幅広い機関と共同で開発を進める体制を整えた。今回,産総研と設立する研究室はこうした動きをさらに加速するもの。設立時の人員は十数名程度の予定としている。
産総研は超電導デバイスの開発や量子物理学などの蓄積を有し,低温超電導デバイス作製用機器と関連するノウハウを統合・集約した共用研究開発施設,超電導アナログ・デジタル開発施設(CRAVITY)を運営している。自らの各種超電導デバイスの作製,研究開発に利用するとともに企業,大学などに提供し,超電導デバイスの研究開発に貢献してきた。
産総研の大型連携のための制度である連携研究室では,企業の研究者をグループ単位で受け入れることが可能。産総研はこの連携研究室などの取り組みにより,基礎研究の成果をイノベーションにつなげる「橋渡し」を推進するとしている。