監視カメラ市場,五輪需要で2019年に501億円(2017年比6.1%増)

富士経済は,セキュリティ関連の機器・システム,サービスの市場を調査し,結果を「2018セキュリティ関連市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。

それによると,アナログカメラの市場が縮小しているが,高画質で利便性の高いIPカメラの市場がアナログカメラからのシフトもあって伸びており,拡大している。今後,監視カメラ市場は,東京五輪に向けた新設需要を取り込み,2019年に501億円(2017年比6.1%増)と新設需要により拡大が予想されるが,以降はリニューアルを主体とした安定推移が予想されるという。

IPカメラは,主力の流通・小売,工場向けなどが堅調であるほか,直近では鉄道などのインフラ向けや,重要施設など,建物の外周警備向けが伸びている。ただし,市場全体としては以前ほどの勢いはみられず,主要メーカーでも伸び悩んでいるところがある。

監視カメラを採用する中小口案件が堅調に増加しているものの,数千台以上を採用する大口案件が減少している。また,中国や韓国などの安価な製品が投入され価格競争が進んでいることから,大手メーカーでは画像解析を利用した高度なソリューション提案を進めており,2017年以降は特にその傾向が顕著となっている。

また,用途を絞り込み,目的を明確にした提案や監視カメラへの画像解析機能の内蔵化などにより比較的低コストでユーザーにも分かりやすいサービスの提案も積極化している。

アナログカメラでは,従来型のアナログCCTVカメラの市場が,部品供給が止まり,メーカーが販売量を絞り込んだことから急激に縮小しており,2021年には僅少になるとみられる。HD-SDIの市場も価格が高いうえ,伝送距離に制限があるため縮小しているという。

一方,安価で高画質なAHDやHD-TVIの市場は,高機能やネットワーク化が求められない集合住宅や小規模店舗などの新規案件や,既設のケーブルがそのまま使えることからアナログCCTVカメラのリニューアル需要を取り込み拡大している。大手メーカーがAHDやHD-TVIの販売を開始しているほか,安価な海外製品を扱う中小ベンダーの参入も相次いでいる。将来的には低価格化が進んでいるIPカメラへの移行も予想されるが,当面は市場拡大が続くと見ている。

警備用ロボット/ドローン関連サービスでは,ビルや商業施設,公共施設などで巡回警備や異常時の対応などを自律して行なう,もしくは,人の警備を補助する製品を対象としており,市場は製品の販売やリース額,ロボットを利用したサービスの利用額として調査している。

製品は,地上を走行して侵入者や不審者などを検知すると音やサイレンなどで威嚇し,警備員や管制センターなどへの通知を行う「地上型」,上空を飛行して不審者の発見や追跡,異常事態の把握,カメラによる撮影や通知を行なう「飛行型」に大別される。大手警備会社が1980年代から製品の販売やサービスの提供に取り組んでいる。

地上型は比較的古く,リースが主体であり,敷地が広い工場などで人による警備の補助,各種イベントでの一時的な導入,企業の受付などに採用されてきた。近年は,2015年に綜合警備保障が「Reborg-X(リボーグエックス)」を市場投入しているほか,2018年にはセコムが自律型巡回監視ロボット2機種を発表し,本格的な実用化に向けた取り組みを進めている。

飛行型はドローンの活用が進んでいる。ドローンによる巡回警備も実用化されつつあり,市場の本格化が期待される。大規模なスポーツイベントなどでは,近年,上空からの広域の監視や見守りを可能とする気球や飛行船も活用されている。市場は今のところ小規模であるが,警備業界では人手不足解消や業務効率化に対する期待度が高く,今後高成長が予想されるという。

調査の結果,セキュリティ関連ビジネスの国内市場は2017年に前年比1.7%増の9,368億円となったという。分野別では,リプレース需要が旺盛な災害・防災関連機器/サービス分野が好調だったほか,監視カメラシステム分野,自動車分野,家庭向け機器/サービス分野などは堅調であったという。2018年以降も多くの分野が堅調に推移するとみるが,当初期待されていた年の東京五輪に関連する需要は予想を下回っているとする。今後は画像解析やAI,IoTなどの技術革新による新たな需要分野の開拓が待たれるという。

このうち監視カメラシステム分野では,アナログ監視カメラでAHDやHD-TVIの市場が拡大する一方,従来型のアナログCCTVカメラの市場が縮小している。IPカメラの市場は拡大しているものの,大口案件を中心に需要の飽和感がみられる。映像総合管理ソフトウエアは大口案件の減少などにより市場が一時的に縮小したが,2018年は反転が期待される。家庭用見守りカメラは認知度上昇とともに,商品ラインアップが充実し,市場が拡大しているとした。