東京大学とAIメディカルサービスは共同で,人工知能(AI)を活用し,小腸カプセル内視鏡画像の中から粘膜傷害(びらん・潰瘍)を高精度で自動検出する内視鏡画像診断支援システムを開発した(ニュースリリース)。
薬や炎症による粘膜傷害は,胃や大腸だけでなく小腸にも起こり,最も高頻度な異常となっている。小腸はカプセル型の内視鏡を用いて見ることができるが,1患者あたり6万枚程度の内視鏡画像を30~120分かけて読影するのは,読影者にとって大きな負担であり,病変が見逃されることも危惧される。
今回研究グループは,AIに機械学習をさせることにより,小腸びらん・潰瘍をカプセル内視鏡画像から自動的に発見するシステムの開発に取り組んだ。機械学習において非常に重要なのはAIに覚えさせる内視鏡画像(教育用データ)が高品質で十分な量であることだが,東大はこれまで1,000件以上のカプセル内視鏡検査を行なってきており,膨大なカプセル内視鏡画像を蓄積している。
今回は,5,000枚以上の小腸びらん・潰瘍画像を準備し,その画像から熟練した内視鏡医が質の高い内視鏡画像を選別し,細かく病変の範囲をマーキングして,びらん・潰瘍の教育用データを作成した。そのデータを,AIメディカルサービスが独自に開発したニューラルネットワークによるディープラーニング・システムに導入し,学習させることで,カプセル内視鏡診断支援システムを開発した。
その結果,検証用の内視鏡画像10,440枚から,びらん・潰瘍を91%の精度で正診することができた。また,10,440枚の画像の解析に要した時間は233秒であり,解析速度は人間の能力をはるかに超えるものだった。さらに,このシステムは読影医が正常と判断した10,000画像のうち,3画像内にびらんを新たに発見した。
このシステムは熟練した内視鏡医が発見できなかった病変も見つけることができ,病変見逃しの防止につながる可能性も示した。これまで,AIを活用したカプセル内視鏡診断支援システムは確立されていなかったという。
研究グループは,今後さらに検出精度の向上や粘膜傷害以外の病変の検出といった応用を進め,小腸病変検出を支援するカプセル内視鏡診断支援システムの実用化を目指すとしている。