阪大,高品質のビスマス系薄膜の作製に成功

大阪大学は,価格,低毒性,安定性に優れた硫化ビスマスの成膜プロセスを開発し,高性能光応答素子の作製に成功した(ニュースリリース)。

環境や人体への影響から,鉛を使わないペロブスカイト材料の探索が依然として課題となっている。光を受けると電気抵抗を変化させるフォトレジスタも,安価で高性能な硫化カドミウム(CdS)などが用いられてきたが,やはり代替となる低毒性化合物材料が求められている。

数千万種類以上もある有機・無機およびハイブリッド材料の中には,優れた半導体があると考えられているが,素子材料の性能を評価するには均一で平坦な薄膜が必要だが,それぞれ最適な成膜方法を開発して多くの材料を検討するには,膨大な時間と労力を要する。

今回研究グループは,粉末でも簡便に光電気特性を評価できるマイクロ波分光法を用いて材料を探索した。200種類以上の材料を評価したところ,硫化ビスマス粉末が高い性能を示すことを見いだした。しかし,硫化ビスマスは溶媒に溶けにくい粉末材料であり,そのままでは素子に応用できない。

そこで,ビスマス(Bi)を含む化合物と硫黄(S)を含む化合物を前駆体とする溶液調整を検討し,平坦で均一なアモルファス性の薄膜が形成できる方法を見いだした。また,光電気特性と膜平坦性を兼ね備えた高品質の硫化ビスマス薄膜を形成することができる熱処理法も見出した。

これにより作製した硫化ビスマス薄膜は優れた平坦性を示し,従来の成膜法と比べて結晶のサイズが大きくなった。ビスマスと硫黄の割合が理想的な2:3に近いことも確認でき,さらにビスマスと硫黄の結合が層構造を形成して基板に平行に積み上がっていることも分かった。

この新規プロセスでも,多くの条件を最適化する必要がある。ここでもマイクロ波分光法で,最小労力でプロセスを最適化し,マイクロ波分光法を活用した評価法を基軸とした材料探索・プロセス開発という,独自の開発手法の有効性を示した。

その結果,従来のプロセスで作製した硫化ビスマス薄膜に比べて,素子の光応答性能を6倍~100倍以上向上させることがでした。作製した素子は,大気中・室内で3ヵ月放置した後も性能を維持しており,長期安定性にも優れているという。

今回同様の開発プロセスは,他の硫化物(カルコゲナイト)にも適用できるという。例えば,硫化モリブデン(MoS2)や硫化タングステン(WS2)は,優れた電気特性を持つ層状化合物として注目を集めている。ビスマスを含む低毒性化合物太陽電池材料も探索されており,開発した手法の適用が期待されるとしている。

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