光産業技術振興協会・多元技術融合光プロセス研究会は2018年8月30日,産業技術総合研究所・臨海副都心センター別館(東京都江東区)において「レーザー加工技術の最新動向」をテーマに第2回研究交流会を開催した。
今回の研究交流会の切り口は,材料表面の付加加工(AM),除去加工と製品へのレーザー加工技術の適用に向けた開発。冒頭,代表幹事の理化学研究所・杉岡幸次氏が挨拶に立ち,前回の研究交流会のアンケート結果より,レーザー加工市場に関心を集めている傾向を述べたうえで,「レーザー加工市場はここ数年10%で成長している。光産業分野の中でも非常に有望な分野となっている」と語った。
講演はまず,ホンダエンジニアリングの下田章雄氏が登壇。「レーザーによる金属粉末積層技術の自動車金型部品への適用」をテーマに,自社開発した金型造形向けSLM(Selective Laser Melting)方式のAM(Additive Manufacturing)装置を紹介した。同社の装置は市販のものに比べて造形スピード,造形サイズ,造形コストに大きなアドバンテージがあるという。
次に,「最新AM技術の現状とその適用展開」をテーマに三菱重工業の石出孝氏が講演。日本のAM技術は遅れがあると指摘をしたうえで,海外企業・大学における最新のAM技術開発の動向を紹介した。キーワードはバインダジェット方式のAM装置とサポートレス造形技術で,さらに造形材料の低コスト化を課題として挙げた。
続いて,「TNGAエンジンへのレーザー加工技術の適用」をテーマにトヨタ自動車の谷中耕平氏が講演。トヨタ自動車がTNGA(Toyota New Global Architecture)ベースのエンジン生産に採用しているレーザークラッドバルブシート工法を紹介した。最新の工法では光源を従来のCO2レーザーから半導体レーザーに変えており,そのメリットが語られた。
休憩を挟み,後半はまず,「レーザークリーニングの最新アプリケーション2018」をテーマにクリーンレーザージャパンの本村孔作氏が講演。クリーンレーザーシステムズはドイツに本社を置くレーザークリーニング技術開発メーカーで,金型クリーニングや溶接・接着前後処理,オイル除去,塗膜・酸化膜除去などのアプリケーションに対応している。講演ではこれらのアプリケーションを中心にレーザークリーニングの適用例を述べた。
次に,「超短パルスレーザーを適用した計測・プロセス技術の展開」をテーマに名古屋工業大学の小野晋吾氏が講演。超短パルスレーザーを用いた紫外領域におけるデバイス作製やテラヘルツ波用反射防止構造の作製について,材料評価とプロセス技術を解説した。
最後は会員からの話題提供として,同研究会顧問でパラダイムレーザーリサーチの鷲尾邦彦氏が「LPM2018 第19回レーザー精密微細加工国際シンポジウム」の参加報告を行ない,研究交流会の全プログラムは終了し,散会となった。次回はこの11月6日に,場所を同じく産業技術総合研究所・臨海副都心センター別館において,「レーザー加工のインテリジェント化技術の動向」をテーマとした第3回研究交流会が開催される予定だ。
今回の研究交流会を通じてはレーザー加工技術の進展と,その適用拡大の可能性を感じるものがあったが,材料特性に対する最適加工や生産性を追求する技術課題の解決や新たなレーザー加工法の開発の重要性を再認識するものとなった。