理化学研究所(理研),高輝度光科学研究センター,東京大学らの共同研究グループは,「X線強度干渉法」の原理に基づき,光速近くまで加速された電子ビームの時間幅の計測法を開発した(ニュースリリース)。
電子ビームの時間幅を制御できるようになると,XFELのパルス幅を実験の目的に応じて柔軟に変えることが可能になるが,そのためには,まず電子ビームの時間幅を正しく測定することが不可欠となる。SACLAやLCLSでは「高周波デフレクター」と呼ばれる装置を用いるが,その時間分解能は10~20fs程度であり,現在のSACLAの電子ビームの時間幅を測定するには性能が不十分だった。
今回,研究グループは,電子ビームから放射されたX線を分光光学素子によって単色度を変化させながら強度干渉現象の程度を計測することで,電子ビームの時間プロファイルを計測できることを理論的に示した。また,実際にこの計測法をSACLAに応用した結果,その電子ビームの時間プロファイルが半値全幅7.3fsおよび45.8fsの二つのガウス関数(正規分布)の和として表されることが明らかになった。
今回開発した計測法は,電子ビームの時間幅を測る精密な“ものさし”といえるもの。この技術によって,これまでは不可能だった10fs以下の時間分解能で電子ビームの時間幅を計測することが可能になった。
今後,この計測技術と電子加速器技術によって電子ビームの時間幅を制御することで,XFELの時間幅を実験に応じて柔軟に変更することが可能になると考えられるという。特に,電子ビームを短くすることによってアト秒領域のXFELが実現できると,現在のXFELでは未踏の超高速現象を観測する強力なツールになるとが期待できるとしている。