東北大学,量子科学技術研究開発機構,島津製作所,日本電子は,電子顕微鏡用軟X線発光分光器(SXES)を改良し,ホウ素の分析強度を3倍以上に高めることに成功した(ニュースリリース)。
ホウ素は,微量でも鉄鋼材料や半導体デバイスの性能に大きな影響を与える物質として知られている。4者は,過去に製品化した電子顕微鏡用SXESの性能向上ニーズに応えるため,新たなSXESの試作および実証試験を行なった。
研究グループは,ホウ素の分析強度を高めるために最適化した分光配置とキーパーツである回折格子への増反射膜形成の設計を行なった。この設計に基づいて,回折格子を作製し,回折格子表面へ希土類元素の成膜を施した。
最適化した分光配置を実現するように改造したオリジナルSXESに新しい回折格子を組込んで試作器を完成させ,テストした結果,ホウ素の信号強度が3倍以上に増強したことを確認した。今後は,販売中の汎用SXESに搭載して実用テストを開始する。
また,理論上さらなる強度向上が見込めることから,鉄鋼材料や半導体材料に添加された濃度10ppm以下のホウ素の検出やその分布の可視化を可能とするSXES開発に繋がる可能性があるという。
微量なホウ素の分析は,軽量かつ高強度な鋼板の生産や半導体デバイスの高効率化に関する研究開発に貢献することが期待されており,鋼板の軽量化や高強度化による自動車の燃費向上や,半導体デバイスの高効率化による省エネルギー社会の実現への貢献が期待でき,日本の産業力の向上に寄与するものだとしている。