東京理科大学の研究グループは,光触媒反応による糖変換技術を用いることにより,低価格糖から複数種の希少糖を高純度かつ低価格で生産できる希少糖生産法を開発した(ニュースリリース)。
近年は消費者の健康志向の高まりを受けて「希少糖」に対する社会のニーズが高まっている。「希少糖」は①砂糖に似た良好な味質をもちながら、②生体内で代謝されずカロリーオフが実現できることが知られているが,一般的な砂糖に比べて価格が高い点が課題となっている。
セルロース系バイオマスからの希少糖生産法は,セルロース系バイオマスを糖化処理することにより,D-グルコースやD-キシロースのような低価格糖を生産する工程と,光触媒反応による糖変換技術により低価格糖を希少糖へと変換する工程の大きく二つに分かれる。
セルロース系バイオマスに対して,酸やセルラーゼなどの糖化処理を行なうことにより,多糖であるセルロースは単糖まで分解され,D-グルコースやD-キシロースを得ることができる。キノコの菌床に杉オガやコーンコブ(トウモロコシの芯を粒状にしたもの)を使用すると,セルロース系バイオマスの杉オガやコーンコブは,糖化処理によりD-グルコースやD-キシロースが豊富に得られる。
その後,光触媒反応特有の強力な酸化力により,糖に対して従来起きなかった酸化反応を引き起こす。その結果,糖の立体構造を変化させずに一炭素減炭するため,D-グルコース(C6糖)からD-アラビノース(C5糖),D-アラビノース(C5糖)からD-エリスロース(C4糖)が生成する。
今回,界面科学技術を用いて,助触媒(白金等の貴金属)を担持させた細孔のある酸化チタン粒子(メソポーラスチタニア)の光触媒材料を合成し,糖変換効率や糖選択性の向上に成功した。光触媒材料や糖原料を変えることにより,糖選択性や糖変換効率の向上を図れることが分かっており,将来的にはさらに多数種の希少糖を生産できる可能性があるという。
研究グループは,セルロース系バイオマスのモデルとして長野県のキノコ廃培地を用いて,希少糖の大量生産法の実用化を目指す。将来的には,安価で健康に有益な希少糖を市場に提供することを目指すとともに,キノコ廃培地に代表されるように地域特有のセルロース系バイオマスを原料として利活用することで,地域社会にも有益な希少糖の実現を目指すとしている。