京都大学の研究グループは,温度応答性を示す高分子を与えるN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と,pH応答性を示す高分子を与えるメタクリル酸(MAA)が交互に配列した高分子を世界で初めて合成した(ニュースリリース)。
合成高分子の代表的重合法であるラジカル重合では,様々な置換基を有するビニルモノマーを組み合わせて共重合することができるが,配列を制御するのは不可能であり,もし配列制御が可能になれば従来の高分子とは異なる物性や機能の創出が期待される。しかし,配列制御によって配列に基づく機能を調べた例はほとんどなかった。
研究グループは,温度応答性を示す高分子を与えるN-イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)と,pH応答性を示す高分子を与えるメタクリル酸(MAA)が交互に配列した高分子を世界で初めて合成した。NIPAMとMAAそれそれのポリマー(PNIPAM,PMAA)は温度応答性,pH応答性を示し,機能性高分子材料の合成に用いられる汎用モノマー。
得られたNIPAMとMAAが交互に並んだ共重合体は低温の水に溶解するが,その水溶液を徐々に温めるとゆっくり濁った。温度に応答して濁る現象はPNIPAMと同じだが,ある温度で急激に濁るPNIPAMに比べて幅広い温度領域で温度応答性を示す特徴を示し,pHによって温度領域を変えることが可能であり,温度とpHの二つの物理刺激に応答した。
このように温度やpHに応答する高分子は薬物運搬材料をはじめとする医用材料でよく用いられている。今回得られた共重合体は,わずかな温度変化に応じて水中で集合体(粒子)の大きさを変える高分子であり,医用材料としての展開が期待される。また配列が制御された一次構造が均一な共重合体は,微細化が求められる半導体用フォトレジスト材料に対して興味が持たれているという。