九州工業大学は,細胞の核膜を蛍光色素で染色する技術の開発に成功した(ニュースリリース)。
生命の設計図であるDNAは,核膜によって隔てられた核内に存在している。核膜は非常に複雑な構造体だが,細胞分裂の度に崩壊と再形成を繰り返している。このような核膜の動きを追跡するためには,生きた細胞の中で核膜を染色する必要があり,これまでは核膜に存在するタンパク質に蛍光色素を連結したものが使用されてきた。
しかし,核膜に存在するタンパク質は,染色体などの核内成分と相互作用するため,核膜の動きを正確に追跡することができないという問題があった。
研究では,火山や温泉などに生息する「古細菌」という生物から見つけた,特殊の酵素反応を利用して,核膜だけに蛍光色素(蛍光タンパク質)を連結する技術を開発した。この技術では核膜に元々存在するタンパク質を利用しないため,核膜の動きを正確に追跡することができる。実際に,この技術を利用して細胞分裂中の核膜の様子を詳細に観察することに成功した。
この技術は,細胞分裂の仕組みを調べる基礎研究だけでなく,ガン細胞の識別などの医療分野への応用も期待されるとしている。