島津製作所は,レーザー誘起ブレークダウン分光法(LIBS:Laser Induced Breakdown Spectroscopy)の原理を用いて,同手法としては世界最高クラスの感度で微量な金属元素を測定する新技術を開発し,試作機による実証実験を開始した(ニュースリリース)。
半導体の製造工程では,ウエハ上の金属や異物を洗浄液によって取り除く洗浄工程がプロセス全体の20~30%程度を占める。現在は使用時間で洗浄液の交換周期を決めることが一般的なのに対し,近年は洗浄液の効率的な利用による製造コストの削減や環境負荷の低減が必要とされるため,製造現場でリアルタイムに洗浄液の汚染状態をモニタしたいというニーズがある。
同社は,レーザー光学技術や分光技術を生かしたLIBS技術の研究を進めてきた。開発した新技術は,出力や安定性に優れた自社製のレーザー光源を採用するとともに,これまで培ってきた分光技術によって光学系を最適化したことで,極めて簡便かつ短時間で微量な金属の測定を可能にしたという。
専用のプレート上で蒸発乾固させた測定対象物にレーザーを照射することでプラズマを発生させる。このプラズマから放たれる光を検出することで,対象物に含まれた金属元素を数ppmオーダーで同定・定量できる。この感度は,LIBSの原理を基礎にした測定手法として世界最高レベルだとしている。
この技術を用いて開発した試作機は,幅1m×奥行き1mに収まる設置面積ながら,半導体洗浄装置との連動が可能。洗浄液のサンプリングから測定までを自動化しており,洗浄液を汚染する銅やアルミニウム,チタンなどの微量な金属12成分を1分程度で同時測定することに成功している。
この技術の実用化により,洗浄プロセスにおける微量な金属のモニタリングを通じた歩留まりの向上や,洗浄液交換周期の把握による製造コストの低減などが期待されるとする。
今後は,半導体製造装置メーカーや半導体メーカーでの実証実験を進めて試作機のユーザビリティ改善や性能向上を図り,2020年内の実用化を目指す。また,インフラ点検や工場廃液の検査など,半導体関連以外の分野にも新技術の適用を検討し,市場開拓を推進していく。