東京都市大学の研究グループは,植物の主成分であるセルロースとガラスから,新しい有機・無機ハイブリッド材料を生成することに成功した(ニュースリリース)。
アセチルセルロースとアルコキシシランを原料として,セルロース-ガラスのハイブリッド材料を生成した。溶剤にアセチルセルロースとアルコキシシランを溶解し,触媒として塩酸水溶液を加え,室温下で1時間撹拌することにより反応させた。
その後,反応溶液をトレーに移し,60℃に加温した乾燥機の中で反応を継続させながら乾燥させ,透明で均一なフィルムができた。この製法は,触媒として加えた塩酸の作用でアセチルセルロースはセルロースに,アルコキシシランはガラスに変換する反応を同時に進行させている。
この方法により得られた透明なフィルムを電子顕微鏡で観察したところ,セルロースとガラスが混ざり合っていることが分かり,さらに,示差走査熱量測定およびX線回折分析を行なったところ,それらは分子レベルで合わさっていることが明らかになった。
また,材料の透明性を評価するために透過率測定を行なったところ,380-1100nmの範囲で93%と非常に高い透過率を有していた。
研究で得られた新材料を,乗用車のガラス部材のみならず,ボディ材料(乗用車の約22%を占める)にも利用できれば,車両重量の25%程軽量化が見込まれる。また,包装材料などへの利用も想定され,材料生成時のコスト,時間および環境負荷の低減が期待できるという。
また,今後は,物性値とセルロースとガラスの配合比の関係や,材料の長期の安定性,そしてより安価な生成方法について研究を進めるとしている。