理化学研究所(理研)の研究グループは,光受容による植物の新たな遺伝子発現制御機構を解明した(ニュースリリース)。
植物は土の中で発芽した後,地上に芽を出し,光を受容することで形態形成を開始する。植物が持っている青色光・赤色光・遠赤色光に対する各受容体のうち,青色光に対する受容体は胚軸(発芽した苗の茎の部分)の伸長や花成形成時期の調節に重要な役割を果たす。光を受容した植物の内部では,ダイナミックに遺伝子発現が変動するが,その変動や制御機構については,まだ多くの謎が残っている。
今回,研究グループは暗所で発芽したシロイヌナズナを青色光下へ露光したときの転写開始点の位置をゲノム全域にわたって調べた。その結果,220個の遺伝子で,暗所において主要だった転写開始点の位置が下流へと移行し,mORF(main open reading frame,タンパク質をコードする領域)より上流に位置するuORF(upstream open reading frame)が読み飛ばされる現象を発見した。
つまり,暗所では主にuORFを含む遺伝子領域がメッセンジャーRNA(mRNA)に転写され遺伝子発現が抑制されること,一方,青色光下への露光後は主にuORFを含まない遺伝子領域がmRNAに転写されることでuORFの抑制を免れ,遺伝子発現が促進されることが分かった。
この研究によって,植物が光応答時における転写開始点とuORFの位置関係によって遺伝子発現を調節する仕組みが明らかとなった。この仕組みは,光応答に限らず,さまざまな環境への応答に利用されていると考えられるという。