東北大学と名古屋大学は共同で,ブラックホールから輻射が出る過程を模倣した量子ビット模型を提案し,その性質の理論的研究を通して,ブラックホールがこれまで考えられていた”限界”よりも強い量子的なもつれを共有できる可能性を見出した(ニュースリリース)。
ブラックホールは現代物理学の課題のひとつである量子重力理論の完成に向けて重要となることが強く期待される研究対象のひとつ。ホーキング博士によって導入されたベッケンシュタイン・ホーキングエントロピーはブラックホールの熱的なエントロピーであるとこれまで考えられており,それが量子もつれの強さの上限を与えると信じられてきた。
研究グループは,量子ビット模型を用いてこの議論の不十分な点を見出し,これまでの理論的予想が,ある種のブラックホールに対しては成り立たない可能性を指摘した。
この量子ビット模型はブラックホールの熱的な性質を再現するものになっており,そこでは零エネルギーの輻射が重要な役割を果たすという。今回,この零エネルギーの輻射が量子もつれを共有できることから,ブラックホールが極めて高温な防火壁で覆われているという仮説が論理的必然でないことを明らかにすることに成功した。