大阪市立大学の研究グループは,藻類由来の光合成膜を固定した電極とギ酸脱水素酵素を固定した電極とを連結し,可視光で発電しながら同時に二酸化炭素を削減し,ギ酸を生成する機能を持つバイオ燃料電池の開発に成功した(ニュースリリース)。
この研究では,濃緑色単細胞微細藻類スピルリナの酸素発生型光合成機能による太陽光エネルギーを利用し,水を原料にして二酸化炭素を削減しながら発電し,同時にギ酸の生成を可能とする,藻類機能をデバイス化したバイオエネルギー創成多機能型太陽電池の構築に成功した。
二酸化炭素を含む溶液中で光合成膜固定電極とギ酸脱水素酵素固定電極とを連結した装置において,可視光を光合成膜固定電極に照射すると回路に一定の電流が流れ(55μAを計測),一方,ギ酸脱水素酵素固定電極上では二酸化炭素が還元されてギ酸が生成することを見出した。
可視光を3時間照射した例では,電流は一定値で流れ,ギ酸生成と酸素発生が同時に観測され,さらに二酸化炭素由来の炭酸水素イオンは同時に減少することがわかった。
この研究は,これまで地中への貯留による削減が試みられてきた二酸化炭素を,水とともに原料として利用するもので,光エネルギーを駆動源として,スピルリナの光合成機能を最大限利用し,発電だけでなく同時にギ酸を生成することが可能であることを示した。
これは太陽光エネルギーにより二酸化炭素を有機分子へ分子変換できる新たなバイオエネルギー創製技術であり,地球温暖化物質の一つである二酸化炭素が有用な原料に位置付けられる成果。ギ酸は水素エネルギーの貯蔵媒体だけでなく,有機薬品の合成材料や,無機,有機化合物用溶剤にも利用できる。
研究グループはこの研究により今後,石油・石炭などの化石エネルギーに頼ることなく,二酸化炭素を「排出ではなく利用し削減」しながらエネルギーを創出する究極のバイオエネルギー創製機能を持つ太陽電池への展開が期待でき,低炭素社会実現のための重要なツールになることが期待されるとしている。