富士キメラ総研は,5Gの本格的な導入を目前に開発が進むスマートフォンとそのキーデバイスの世界市場を調査し,その結果を「2018 次世代スマートフォンとキーデバイス市場の将来展望」にまとめた(ニュースリリース)。
それによると,スマートフォンは,先進国を中心に買い替え需要が中心となってきており,市場成長率が鈍化。ここ数年市場拡大をけん引してきた中国も普及が一段落している。今後は,中国を除くその他アジア,中東や中南米,アフリカなどは伸長が期待されるが,中国や北米,欧州は横ばい,日本は横ばいから縮小となり,市場は年率2%程度の低調な成長を予想する。
スマートフォンは5G対応製品の投入が最速で2019年前半とみる。ただし,投入されるのはSub 6の帯域に対応した製品であり,ミリ波帯域への対応は最速で2019年後半から2020年と予想する。まずはLTEと分離したスタンドアロンでの対応になるとみられることから,各社フラッグシップモデルへの搭載を予想する。2022年までは,BOMコストなどの観点よりハイエンドからフラッグシップモデルへの搭載にとどまるとして,市場は3億1,000万台,スマートフォン全体の19.5%を占めると予測する。
デバイスでは小型カメラモジュール(イメージセンサー,レンズユニット,光学フィルターは内数)は,スマートフォン需要の伸長鈍化を受けて数量ベースは緩やかな伸びになっているという。2017年はスマートフォン需要の伸び悩みと小型カメラモジュールの単価下落の影響からマイナス成長となった。
今後は,イメージセンサーやレンズユニットなどの構成デバイスの数が2倍となるデュアルカメラの普及が進み,その比率が高まることから平均単価は維持され,市場は微増推移を予想する。一方,顔認証やAR向けセンシングカメラモジュール市場の拡大が期待されるため,カメラモジュールメーカー各社はセンシング用途に注力しつつあるという。
ディスプレーはLCDとOLEDを対象とした。2017年はLCDが縮小したものの,「iPhone X」向けをはじめとしたOLEDが大幅に伸び,市場が拡大。2018年はOLEDの普及がペースダウンしているものの,前年比1.2%増の5兆5,816億円を見込む。今後は2019年以降に,LG DisplayやBOE,Tianmaなど後発メーカーがOLEDの出荷数量を拡大させ,業界全体で単価の下落が進み,スマートフォンでの採用がさらに増加するとみる。
マクロセル基地局市場は,LTE向けの投資鈍化から縮小を予想する。5Gの導入時でも,LTE導入時のようにマクロセル基地局を大量に設置していくニーズは低いとみる。これは2015年以降に設置された基地局のほとんどがソフトウェアのアップデートなどで5Gに対応可能であることや,5GはLTEと比較して高周波帯域を利用しており,特に,ミリ波帯は伝送距離が短くカバーエリアが狭いことなどが要因としている。
現在,積極的に5Gのマクロセル基地局を設置する意向を示しているのは,LTEとは別にスタンドアロンで5Gのエリアを整備していこうとしている中国のみ。多くのキャリアはLTE基地局のカバーエリアにアドオンセルとして高トラフィックエリアを中心にスモールセル基地局を点在して設置していく戦略をとっていくとみている。各国が5Gを導入するにあたって高速・高効率小セルを実現するための本命手段となるスモールセル基地局の市場は,2022年に2017年の4倍程度まで拡大すると予想する。
ただし,日本のように光ファイバーの敷設率が非常に高い国・地域ではC-RAN(Centralized Radio Access Network)の光張り出し基地局と競合する可能性があるという。C-RAN基地局は基地局自体が高コストであり,BBU(Base Band Unit)の設置スペースをとるものの,最大で100以上のRRH(Remote Radio Head)を収容でき,複数の基地局を統合管理できることから,ユーザー収容数やデータ処理効率などを上げられるとして注目されている。
BBUからRRHの間を光ファイバーで接続しているため,ある程度インフラとして光ファイバーが敷設されている国・地域と親和性が高い基地局であり,欧州,米国,中国などでは実証実験も進んでいるという。