産業技術総合研究所(産総研)は,フロー型マイクロ波合成装置のサイダ・FDSと共同で,以前から両者で共同開発してきたフロー型のマイクロ波加熱装置を改良し,トルエンやキシレンなどの低極性溶媒でも加熱高温化を可能とした連続合成装置を開発した(ニュースリリース)。
近年,チューブなどの流路に溶液を流しながら連続的に化学反応を起こすフロー合成が注目を集めている。また,有機合成の新たな技術として,特定の物質を選択的かつ急速に加熱できるマイクロ波加熱が注目されている。
しかしこれまでは,流路に対する均一なマイクロ波照射や,マイクロ波エネルギーの効率の良い利用が困難であったため,小型反応容器の中で反応溶液を攪拌・加熱を行なうバッチ反応などの,小さなスケールの反応に限られていた。
今回開発したフロー型のマイクロ波合成装置は,温度で変化する照射対象の反応溶液の誘電特性や温度などの状態に対応して,マイクロ波のエネルギーを適切に制御でき,効率的な連続合成が行なえる。
その実例として,有機半導体材料として知られるフラーレン誘導体の連続合成に取り組み,従来のフラーレン誘導体合成では用いることができなかった非ハロゲン系溶媒を用いて,1時間の運転で0.74gの連続生産ができた。これはこれまでのマイクロ波加熱バッチ反応(0.04g/h)の18倍,ヒーター加熱フロー反応(0.07g/h)の10倍の生産性向上となる。
フラーレンに化合物を付加したフラーレン誘導体は,有機薄膜太陽電池やペロブスカイト太陽電池などの次世代太陽電池に用いられているが,実用化には,効率的な合成による低コスト化が必須。今回の成果により,低コスト化への貢献が期待される。