京都大学の研究グループは,ハロゲン化金属ペロブスカイトに光を照射することで大きく屈折率が変化することを発見した。さらに,この屈折率変化を利用してレーザー光の偏光を制御する実験に成功した(ニュースリリース)。
ハロゲン化金属ペロブスカイトは溶液塗布によって結晶化する物質で,薄膜太陽電池の研究を中心として世界で盛んに研究されている。また,高い発光効率を示すことから発光ダイオードなどの材料としても研究が行なわれている。これまで,光の受光(太陽電池)や発光(ダイオード)に関する研究は行なわれてきたが,光を照射したときの特性の変化については明らかになっていなかった。
研究グループは,このハロゲン化金属ペロブスカイトの単結晶に対してパルス光を照射したときの屈折率の変化を測定した。液晶テレビや光通信では「電場」によって屈折率が変化する現象を利用しているが,「光」によって屈折率が変化する現象はフォトリフラクティブ効果と呼ばれ,さまざまな物質で研究が行なわれてきた。
研究では,ハロゲン化金属ペロブスカイトがフォトリフラクティブ効果を示すことを世界で初めて明らかにした。さらに,この屈折率変化を利用してレーザー光の偏光を回転させる実験に成功し,ハロゲン化金属ペロブスカイトの光通信デバイスなどへの新たな利用法を示した。
光の屈折率を制御する技術は,液晶テレビや光通信における変調器のように実生活で利用されている重要な技術。ハロゲン化金属ペロブスカイトは溶液塗布で簡便に薄膜結晶を作製でき,成型や加工の自由度が高い物質なので,この研究の成果は光通信に用いられている光変調器や光スイッチなどの小型化につながるとしている。