慶大ら,量子ドット技術で新規通信波長帯(Tバンド)を開拓

慶應義塾大学は,パイオニア・マイクロ・テクノロジー,光伸光学工業,オプトクエストと共同で,TバンドとOバンドの約80THzに及ぶ広大な波長資源を活用できる波長ルーティングシステムの実証実験に成功した(ニュースリリース)。

100Gb/sを越える光信号を1コアの光ファイバーで伝送可能な光通信技術が開発されているが,光ネットワークに利用される波長帯は,光ファイバー損失が最小となるCバンドやLバンド,標準光ファイバーの零分散波長が含まれるEバンドなど一部に限られている。一方,従来ほとんど利用されていないTバンドやOバンドを積極的に活用できれば,伝送容量の拡大などが可能となる。そのためには,光源,光回路や波長ルーティング技術の開発が必要だった。

研究では,報通信研究機構が有している量子ドット技術を発展させ,TバンドおよびOバンドで動作可能なゲインチップを実現した。このゲインチップは1050~1300nmの波長範囲を3素子でカバーできる広帯域性,95℃以上の高温環境下での安定動作が可能な耐環境性,100万時間以上の動作が可能な信頼性を有しており,これらのゲインチップを搭載した波長可変光源およびSOAを開発した。

さらに,TバンドよびOバンドで動作可能なAWGを作製し,1入力23出力のサブバンド切替用AWG(1×23 AWG),47入力47出力の信号切替用 AWG(47×47 AWG),23入力1出力のサブバンド切替用AWG(23×1 AWG)を多段接続することにより,1081チャネルの波長ルーターを実現可能な構成とした。

開発した波長可変光源,SOA,波長ルータを用いて,TバンドおよびOバンドの広大な波長資源を活用した波長ルーティングシステムを構築し,1波長あたり10Gb/sの信号伝送に成功した。

実験では,低コストで低遅延な強度変調・直接検波(IMDD:Intensity Modulation Direct Detection)方式を採用した。この研究成果により,TバンドおよびOバンドの80THzに及ぶ広大な波長資源を有効活用して大容量でかつ大規模な波長ルーティングシステムを実現可能であることが実証された。

TバンドおよびOバンドは,これまで長距離光通信で用いられてきたCバンドおよびLバンドの5倍以上の周波数帯域を有していることから,波長チャネル数を5倍以上に増大させることによって,低コストで低遅延なIMDD方式を利用してもコヒーレント伝送方式と遜色のない大容量通信が可能となる。

研究グループは今後,開発デバイスおよびシステムのさらなる高性能化,高機能化を行なうとともに,今回開発した各種光部品の光通信以外のアプリケーションへの展開も検討していくとしている。

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