富士通グループは,光ネットワークの構築・運用管理を容易にするため,光受信器の入力信号から光伝送信号パラメーターを直接推定する技術を開発した(ニュースリリース)。
ICT社会を支える光ネットワークの通信トラフィックは,今後,インターネットに接続される端末とともに爆発的に増大する。これらのデータを収容するため,光ネットワークには新しい光伝送技術が次々と適用されており,今後,さらなる多様化・複雑化が考えられる。そのため,光ネットワークの構築・運用管理を容易にする技術が求められている。
これまで,光ネットワークを構築する際や,運用で問題が発生した際には,専門家による測定・調査を行なう必要があった。大容量化・長距離化を目指す光ネットワーク内の光伝送信号の種類や機器の設定パラメーターはますます複雑化するため,構築や問題の解決に数日の時間を要する可能性もあり,迅速な光ファイバーネットワーク構築・管理の大きな課題となる。
これを解決するため,光ネットワークの状況を遠隔から監視・モニタリングできる技術の開発が求められている。しかし,専用測定器を使うことなく運用管理者が必要な情報を測定するには,光信号特有の性質により実現に課題があった。今回,富士通グループは,遠隔の光受信器における光伝送信号からネットワークの構築・運用に必要となる光伝送信号パラメーター(SN比,変調方式,シンボルレート)を測定する技術を開発した。
開発した技術では,光受信器の受信信号を深層ニューラルネットワークへの入力データ,専用測定器で測定した結果を教師ラベルとし,深層ニューラルネットワークが専用測定器の測定結果を再現するように学習することで,光伝送信号パラメーターを推定する。ここで,受信した光伝送信号には,レーザー周波数などの信号特性に偏りが生じるため,そのまま学習データとして利用すると,偏った状況に特化した学習となってしまい,推定誤差が大きくなる。
そこで,光伝送信号を元に状態を変えた信号を仮想的に生成した。たとえば,レーザー周波数を変えたデータを仮想的に多数生成し,それらを合わせて学習データとすることで,様々な状況を学習結果に反映することが可能となり,推定誤差を小さくすることが可能となった。
今回,実際の光ネットワークに適用される光受信器を模擬した伝送実験系を構築し,約1万個のデータによって光SN比は1%の誤差で,変調方式とシンボルレートは5%の誤差で推定可能なことを実験検証した。この技術を用いることで,これまで専門家が専用の測定器を用いて数日かけて行なっていた作業を,遠隔かつ分単位の時間で推定できるようになるとしている。