東大,血管の新生能と透過性を評価するデバイスを開発

東京大学の研究グループは,ヒトの血管内皮細胞由来の微小な血管をマイクロデバイス上に形成し,血管新生阻害薬の効果を生体外で評価する,in vitro(インビトロ)薬剤評価系を開発した(ニュースリリース)。

がん組織は,周囲に血管内皮細胞増殖因子(VEGF)などのたんぱく質を分泌し,近くの血管の新生を促して大量の栄養や酸素を獲得していることが知られている。

今回,ヒトの臍帯に含まれる静脈内皮細胞をコラーゲンゲルのトンネル構造をもつマイクロデバイス内で培養し,微小な人工血管を作製した。薬剤を添加すればがん環境を再現でき,さまざまな薬剤が血管新生と血管バリア機能へ与える影響を視覚的・定量的に評価できる。開発した系にVEGFを加えると,盛んに毛細血管が新生するが,既存の血管新生阻害薬で処理することで,この血管新生を抑制できることを確認した。

また,微小血管内に蛍光物質を注入し,血管の外にどれだけ漏れ出すかを観察し,血中の不良な成分が体内に侵入しないようにブロックする「血管のバリア機能」を検証した結果,既存の血管新生阻害薬が与える影響が大きく異なることが分かった。

今回開発した技術は,血管新生と血管透過性の双方について,血管および血管周辺環境をターゲットとした薬の薬効評価,スクリーニングなど薬剤が与える効果を定量的に評価することが可能。創薬・医療・生命科学分野への貢献が期待されるとしている。

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