筑波大学,ポーランドグダ二スク体育大学,中央大学の研究グループは,うつ病や認知症,糖尿病,注意欠陥障害者などに共通して低下が見られる機能を効率的に高める運動療法,「汎用型高強度インターバル運動」の効果と脳機構を初めて解明した(ニュースリリース)。
この汎用型運動は,短時間で安全かつ意欲的に取り組むことができ,2週間程度のトレーニングでヒトの筋ミトコンドリア機能を改善してエネルギー効率を高めることから,糖尿病患者にも有用な運動として注目を集めている。
今回の研究では,光を使った脳機能イメージング法である光トポグラフィとヒトの実行機能を評価できるストループ課題を用いて,一過性の高強度インターバル運動がヒトの実行機能の指標であるストループ干渉時間を短縮(実行機能向上)させるか,そしてその際にはどのような脳のはたらきを介しているのかを検討した。
その結果,誰でも行なえる一過性の高強度インターバル運動を行なうことで実行機能が向上すること,その際,実行機能に重要な脳部位(左脳の前頭前野背外側部)の活動が活発になっていることが初めて明らかになった。
これは,これまで明らかにしてきた低・中強度の持続運動で得られた実行機能向上効果が,高強度インターバル形式の運動でも十分に得られることを示しており,体力レベルが低い高齢者や疾患者などをターゲットにした認知症予防を目的とした新たな運動処方の開発を加速させることが期待されるという。
今後,今回確認された運動効果が高齢者などの他の対象者でも得られるか,また,記憶など他の認知機能にも効果があるか,という点も研究成果を社会に還元する上で重要な検討課題だとしている。